事業継続計画(BCP)の実効性を高めるために役立つのが、BCP対策に有効なITツールです。事業継続力の強化に特化したITツールを活用することで、より実践的なBCPの運用を可能にし、さらに策定したBCPを確実に機能させることができます。
現在、多様な機能を備えたBCP対策ツールが数多く開発されているため、「どれを選べばよいか」悩んでしまう担当者の方も多いのではないでしょうか。ここでは、BCP対策ツールの選び方や導入手順、運用方法まで基本情報を解説します。あわせておすすめのツール8選も紹介します。
BCP対策ツールの種類
BCPに特化した主なツールは、大きく以下の5種類に分けることができます。複数の機能をカバーしたツールも存在するので、自社に必要なBCP対策ツールを選びましょう。
| 種類 | 役割・用途 |
|---|---|
| 安否確認 | 安否確認メッセージの送信と、回答の分析を行うツール。自動送信などの機能があり、負担を軽減する。 |
| BCP策定・管理支援 | BCPの策定や計画の見直し、緊急時の意思決定など、BCPの管理全般を支援する。 |
| データの保管・バックアップ | 重要なファイルやシステム全体のバックアップを行うツール。インターネット上のサーバーに保存するツールもある。 |
| 情報収集・リスク管理 | 災害情報や交通情報、緊急時の被害状況など、事業継続に必要な情報を自動で収集し、リスク管理に役立てるツール。 |
| 情報共有 | 情報の伝達や共有など、スムーズなコミュニケーションを支援するツール。 |
上記のようにBCP対策ツールは、緊急時に迅速に事業を再開する、または事業を中断させないための対策を行えるツールです。緊急時だけでなく、平時から活用できるツールも多いため、ぜひ導入を検討してみてください。
BCP対策ツールおすすめ8選
おすすめのBCP対策ツールを厳選して紹介します。
1.【安否確認】エマージェンシーコール
インフォコムが提供する安否確認システム「エマージェンシーコール」は、1995年のサービス開始以来、5,200社以上の企業・団体の安全確認を支えています。
東日本大震災では“震災発生から24時間後の回答率が95%以上”と安定したサービス提供を実現し、有事の際に確実に稼働するシステムとして信頼を得ています。未回答者に繰り返し自動で連絡するリマインド機能や、メール・電話・LINEなどの豊富な連絡手段も、高い回答率を後押しします。
データメンテナンスの勉強会や個別相談会などのサポート体制が充実するほか、組織によって柔軟な運営を可能にするシステム設計も魅力。管理者や、回答の確認者数に制限がなく、権限の付与も簡単に行えます。
2.【安否確認】Biz安否確認/一斉通報
「Biz安否確認/一斉通報」はNTTドコモビジネスが提供する安全確認サービスです。サービス提供開始から18年の実績をもち、現在、2,300社が利用しています。
魅力は、NTTが培ってきた技術やノウハウを活かした堅牢性。4重のバックアップ体制を構築し、震度7の地震にも耐えうるデータセンターにて、安定した稼働を実現します。
自動送信や回答分析などの基本機能のほか、回答者の位置情報がわかるGPS機能も搭載。迅速な安否確認を可能にします。さらに深夜・休日問わずサポートする体制が整っているので、困ったときも安心です。
3.【安否確認】セコム安否確認サービス
9,500社の導入実績を誇るセコムトラストシステムズの「セコム安否確認サービス」。政府のセキュリティ評価制度(ISMAP)にも登録されており、セコムがセキュリティ事業で培ってきたオペレーション力や専門知識を基盤に、企業の初動対応を強力に支えます。
とりわけ特徴的なのは、24時間365日稼働するトラストオペレーションセンターです。代行送信も担っており、専門知識を有したスタッフが災害情報を適切に判断したうえで、確実に、かつ迅速に安否確認を実行します。有事の際に頼れるサポート体制が整う安否確認サービスです。
4.【リスク管理・情報収集】Spectee Pro
「Spectee Pro」は、防災テックのスタートアップ企業・Specteeが手がけた危機管理プラットフォームです。AIによって、拠点周辺の危機をリアルタイムに解析し、素早く確実に被害情報や災害情報を可視化します。
企業を脅かす危機の情報を収集し、通知するだけでなく、リスクの分析・予測まで実行するのが同サービスの強みです。気象庁の気象データや全国の道路・河川カメラ、SNS投稿などから必要な情報を選りすぐり、過去のデータとも組み合わせ、被害範囲や物流のリスクなどを予測します。
リリースから約4年で国内契約社数が1,000社を突破。企業だけでなく、自治体や報道機関など、あらゆる組織で活用されています。
5.【リスク管理・情報収集】Bois
防災情報提供サービス「Bois」は、災害時に必要な情報を自動かつリアルタイムに収集できるサービスです。開発元である国際航業は空間情報技術に強みをもっており、GIS(地理情報システム)を土台に地図や位置情報を用いて、確度の高い情報を提供します。
気象庁や自治体からの情報を直接収集し、事前に登録した拠点周辺やサプライヤーの位置情報などと照合したうえで被災リスクを予測するのが特徴です。さらにアンケート機能が搭載されているので、各拠点の被災確認も行えます。これらの工程を自動化することで迅速な初動対応を可能にします。
6.【リスク管理・情報収集・情報共有】BCPortal
インフォコムの情報管理ポータルシステム「BCPortal」は、情報の収集から整理、共有までの工程をサポートし、対策本部の意思決定と指示伝達を迅速化させます。
拠点別に施設の被害や周辺状況、ライフラインへの影響などの情報を一挙に集約。さらに自動でレポートを作成して経営層へ共有するため、迅速に被害の全体像を把握できます。本部と各拠点におけるやり取りがシステム内で可視化される機能も特徴的。“誰がいつ判断と指示を行い、現場でどのように対応したか”がわかることで、対応漏れや属人化を防げます。
先にご紹介した「エマージェンシーコール」を導入している企業は、1,000ユーザーまで無料で利用できるので、ぜひ注目してみてください。
7.【情報共有】Google Workspace
Googleが提供する「Google Workspace」は、組織内のコミュニケーションを支援するグループウェアです。Gmailやクラウドストレージ、Google Meet(ビデオ会議ツール)のほか、表計算ツールや文書作成ツールなど、ビジネスに必要な機能をセットにして提供しています。
あらゆるデータをクラウド上で管理し、場所に関係なくアクセスできることから、データの保護や従業員の安否確認にも有効なサービスです。データセンターが世界各地にあり、最新のセキュリティ技術で保護されているため、高い安全性を誇ります。
ただし「Google Workspace」のようなBCPに特化していない汎用性の高いツールは、管理・運用に注意が必要です。災害用の緊急チャンネルやグループをあらかじめ作成しておく、活用手順のルールを現場に浸透させるなど、事前の準備と運用ルールの整備が必要不可欠になります。
8.【情報共有】Slack
セールスフォース・ジャパンが提供・運営するビジネスチャットツール「Slack」は、チーム内のコミュニケーションやプロジェクト管理、AIツールによるビジネスのサポートなど、幅広い面で活躍します。プロジェクトごとにチャンネルを分けて管理できる点も魅力です。
BCP対策としてのSlack活用シーンはさまざまあり、たとえば災害時であればリアルタイムのコミュニケーションや安否確認、災害情報の共有・指示伝達などが行えます。リマインダー機能を使った備蓄品の消費期限管理など、平常時の危機管理対策にも有効です。
「Slack」も上記で紹介した「Google Workspace」と同様に汎用性の高いツールなので、体制や運用ルールについてあらかじめ定めておきましょう。
BCP対策ツールの選び方・比較ポイント
自社に合うBCP対策ツールの選び方や比較する際のポイントを解説します。
安定性・稼働実績
BCP対策ツールは、緊急時に安定的に稼働するかがもっとも重要な点です。過去の災害時に問題なく稼働したかなど、これまでの実績を参考に、安定性を確認しましょう。データセンターを2拠点に分散させている、災害の少ない地域に構えているなども、判断材料のひとつです。
機能
BCP対策ツールは機能が多く備わっていれば良いというわけではなく、自社の課題を解決できる機能を備えているツールを選ぶことが重要です。
まずは自社の課題を分析し、事業継続のために“何を強化したいか”を明確にしてから選びましょう。機能性と費用のバランスを見て、費用対効果を判断することも必要です。
運用
BCP対策ツールを活用していく際には、運用のしやすさも重要です。メンテナンス方法のほか、同時に接続できるユーザー数や、権限制限の有無などについても確認するとよいでしょう。たとえば権限追加に数週間の時間がかかる場合、スムーズな運用を妨げてしまいます。
サポート体制
便利なITツールを導入しても、使いこなせなければ費用対効果は下がってしまいます。いざというときに頼れるサポート体制が充実しているかも確認しましょう。自社の成長に合わせて、必要な機能をオプションとして拡張できるかも重要な視点です。
BCP対策ツールの導入手順とポイント

BCP対策ツールをスムーズに導入するには手順の理解が欠かせません。それぞれのポイントも解説します。
①自社のリスクと課題の分析
自社の事業継続活動において、“どの部分を強化したいか”によって、自ずと選ぶITツールは変わってきます。自社に合うITツールを判断するために、まずは自社を脅かすリスクと現在のBCP対策における課題の洗い出しを行いましょう。
解決したい課題を明確にしたあとは、ITツール導入で達成したい目標値(KGI/KPI)を決めるとより効果的です。同時に導入スケジュールも検討・整理します。
②ツール選定
次に、自社のリスクと解決したい課題にマッチするツールを選定します。その際、目的と機能がマッチしているかをよく見極めることがポイントです。「安否確認に対する回答の分析を自動化したい」という目的を決めたはずなのに、いつのまにか「せっかく導入するなら多機能のツールを!」と目的がすり替わってしまうケースもよくあります。
そのITツールで“何ができるか”ではなく、“何を解決したいか”という視点を忘れないようにしましょう。
③テスト運用
導入するITツールを決めたら、いきなり本運用するのではなく、必ずテスト運用を行いましょう。たとえば特定の部署やチームで試してみるなど、スモールスタートが基本です。
テスト運用の段階で、業務を遂行する際の課題や問題点を洗い出し、その都度改善しておくことで、スムーズな本運用へとつながります。
④運用体制整備と全社通知
導入後に効率よくツールを活用していくには、運用体制の整備が重要です。緊急事態が発生したときの活用手順やルールを決めて、マニュアルなどに落とし込みましょう。管理者のほか、連絡先を更新する担当者など、スムーズに運用するためのチーム体制を整えることも必要です。
環境が整ったら、マニュアルなどとともにITツールの運用に関して会社全体に通知します。
⑤本運用と定期的な見直し
本運用を開始したあとも、定期的な見直しが必要です。課題や問題点が出てきたら、早急に運用体制の改善などを行いましょう。導入したBCP対策ツールを使ったBCP訓練も実施してください。緊急時を想定して実際に動かしてみることで、新たな改善点が見つかります。
BCPを強化するには適切なツール選びが重要
現在、BCP対策をサポートする便利なITツールが数多く開発されています。より実践的にBCPを運用し、緊急時に確実に機能させるには、自社の課題を明確にしたうえで、適切なITツールを選ぶことが必要です。
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