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BCP策定後は社内へBCPを周知させたり、内容の確認やアップデートを行ったりするための訓練の実施が欠かせません。特に介護事業所では年2回(訪問系は年1回)の訓練が義務付けられており、計画的に実施する必要があります。
ここでは、BCP策定後にまず実施することがおすすめされている机上訓練についてわかりやすく解説していきます。机上訓練の種類から実施方法や手順、シナリオの事例まで、机上訓練の実施に欠かせない情報をまとめました。
BCPの机上訓練とは
BCPにおける机上訓練とは、会議室などに参加者が集まり、机上で対応を議論したり、内容を確認したりする訓練手法です。一例を以下で紹介します。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 読み合わせ(ウォークスルー)訓練 | BCPで定めた内容について不備や漏れがないかを関係者で読み合わせして確認する訓練。 |
| シミュレーション訓練 | 訓練シナリオをもとに、行動を確認したり、意思決定を行ったりする訓練。BCPの課題の洗い出しにも効果的。 |
| ロールプレイング訓練 | シミュレーション訓練をより高度に発展させた実践形式の演習。時間経過に伴い変化していく状況のなか、適切な判断や行動ができるかを確認する。より詳細なシナリオが必要となる。 |
これらの机上訓練は、BCPの理解浸透から実効性の検証まで、目的に応じて使い分けることが重要です。訓練を通じて明らかになった課題を計画に反映し、継続的に改善を重ねることで、実際の危機発生時に機能するBCPへと高めていきます。
机上訓練の方法と実施の流れ
机上訓練は、以下の流れに沿って実施しましょう。
机上訓練を計画・実施する際のポイントも交えながら詳しく解説します。
①計画
まずは訓練計画を立てましょう。目的・目標や検証したいテーマ、災害の種類を決めて、訓練の対象者や訓練内容などの前提条件を設定していきます。特に、目的と検証テーマはシナリオを組み立てるうえで重要な要素です。
| 一般企業 | 介護事業者 | |
|---|---|---|
| 目的・目標 | シナリオで設定した災害局面で適切な連絡手段を判断できるか | 感染症発生時にBCPで定めた通りの初動対応ができるか |
| 検証テーマ | 緊急時の安否確認 | 感染症発生時の情報共有 |
前提条件を設定したら、開催日時や会場、訓練体制なども定めます。訓練体制に関しては目的やテーマに応じて、自社だけで実施するのか、協力会社や他機関と連携して行うのかなどを決めてください。
②シナリオの作成
シナリオは目的やテーマに合わせて設定します。まずはインシデントの発生日時や規模、社内外の被害状況などを決めましょう。被害状況に関しては自社や取引先の設備や建物、従業員の被災状況のほか、ライフラインや道路の被害などを詳しく想定してください。
初めは簡単なシナリオで実践し、訓練の回数を重ねていくごとに被害が同時多発的に起こる内容にするなど、徐々に難易度を上げていくとよいでしょう。
ロールプレイング訓練のように刻一刻と変わる状況に対し、議論させる場合は、時間ごとに変化する付与状況と合わせて、参加者に何を考えさせるかの設問(課題)を設定してください。
③訓練に必要な資機材や資料の準備
次に、ホワイトボードやプロジェクターなど訓練に必要な資機材を準備しておきましょう。そのほか訓練実施要項をまとめた資料や司会進行用のスライドなど、当日に必要な書類もまとめておきます。
また、シナリオをもとに当日の時間配分を決めたプログラムの用意や、進行役の選定などを事前に行います。
④会場準備と事前説明
訓練前日に、訓練会場の設営を行います。また、参加者が意欲的に訓練へ参加できるよう、訓練前には事前説明が必要です。目的や検証テーマ、参加者の役割、ルールなどを伝えて訓練の概要を理解してもらいましょう。
特に机上訓練は参加経験がない人にとってはルールが理解しづらい側面もあります。事前説明会で、訓練事務局のメンバーが机上訓練を実演する方法も効果的です。
⑤訓練実施
当日はプログラムに沿って訓練を実施します。プログラム例は以下を参考にしてください。
| 14:00 | オリエンテーション(訓練の目的やルールを改めて説明) |
| 14:15 | シナリオに沿って訓練開始 付与状況①に対する課題投げかけ+グループ議論 付与状況②に対する課題投げかけ+グループ討議 |
| 14:45 | 小休憩 |
| 14:50 | 付与状況③に対する課題投げかけ+グループ議論 付与状況④に対する課題投げかけ+グループ討議 |
| 15:30 | グループごとに発表 |
| 15:45 | まとめと講評 |
| 16:00 | 訓練終了 |
訓練中、訓練事務局は参加者の対応の記録をとり、のちの分析に生かすようにします。訓練後は必ず振り返りを行うことが重要です。参加者全員から意見を引き出せるアンケートの実施も検討してください。
BCP机上訓練のシナリオ例

次に机上訓練のシナリオ事例を紹介します。
シミュレーション訓練のシナリオ例
| 目的・目標 | 大規模な地震が発生した際に、各班でどのような初動対応が必要かを議論する | |
|---|---|---|
| 検証テーマ | 地震発生時の初動対応 | |
| 参加者の役割分担 | 対策本部長・避難誘導班・救護班・情報収集班など | |
| シナリオ | 災害発生状況 | 5月21日(木)14:00に震度7の首都直下型地震が発生 立っていられないほどの大きな揺れが5分ほど起きたのち、収まる |
| 被害状況 | 停電、断水、断ガスが発生 通信規制により電話やメールがつながりにくい状況 事業所の建物に損傷はなし 公共交通機関が停止し、復旧の目途たたず ※津波発生の心配はなし |
|
| 課題 | 上記が発生した際、対策本部長と各班でそれぞれどのような対応が必要か、グループで議論してください。 | |
【進行例】
- まず参加者を4人ずつグループに分け、議論の回答を書き込む資料を配布
- 進行役が訓練の目的やルールを説明
- グループのなかで進行役と書記係を決める
- スクリーンに災害発生状況・被害状況・課題などを映し出し、議論をスタートさせる
- 10分後、各グループに意見を発表してもらう
ロールプレイング訓練のシナリオ
| 目的・目標 | 刻一刻と変わる災害局面で、災害対策本部が事業継続に必要な情報を適切に収集し、対応を判断できるか | |
|---|---|---|
| 検証テーマ | 地震発生時の事業継続 | |
| 参加者の役割分担 | 対策本部長・事務局メンバー・生産対応担当・資材調達担当・物流配送担当・広報担当など | |
| シナリオ | 1 | 震度7の首都直下型地震が発生 |
| 2 | 災害対策本部設置 各担当者へ収集すべき情報を指示 |
|
| 3 | 生産対応担当が現場に電話し、工場や設備の被災状況の確認 付与状況①建物は無事だが、中核業務の要となる設備Aが被災 |
|
| 物流配送担当が道路状況の確認 付与状況②輸送時に利用している〇〇道路が通行止め |
||
| 資材調達担当が各サプライヤーの被災状況を確認 付与状況③仕入れ先Bが被災 |
||
| 4 | 各担当者が収集した情報を対策本部へ報告 事務局メンバーはホワイトボードに収集した情報をまとめる |
|
| 5 | 収集した情報をもとに対策本部で対応を検討 広報担当が被災状況を取りまとめ、社内外へ共有 |
|
| 6 | 対策本部からの指示をもとに、各担当者が次の対応を行う 例) 生産対応担当:設備Aの代替機器を工場Cから移設するにあたり、道路状況について物流配送担当から情報を得て運搬ルートを決める 物流配送担当:資材の代替輸送手段を検討 資材調達担当:あらかじめ確保していた代替の調達先へ連絡 |
|
| 7 | 各担当者が得た情報を対策本部へ報告 | |
ロールプレイング訓練は、参加者と進行役、参加者に情報を与えるシミュレーターに分かれて行います。参加者には事前にシナリオの内容が知らされません。そのため参加者は刻一刻と変わる状況に対し、それぞれが対応を考え、行動に移していきます。シミュレーターは関連企業の担当者や従業員などの役になりきり、参加者から問い合わせがあった際に必要な情報を付与していきます。
机上訓練の記録と報告書
机上訓練の実施内容を今後に活かすために、訓練後には必ず記録として報告書の作成を行いましょう。記録する項目は以下を参考にしてください。
| 訓練の実施概要 |
例) 実施日時:2026年〇月〇日(〇)14:00~ 実施場所:会議室A 訓練目的:大規模な地震が発生した際に、各班でどのような初動対応が必要かを議論する 検証テーマ:地震発生時の初動対応 訓練の種類:ロールプレイング訓練 想定シナリオ:平日14時に震度7の首都直下型地震が発生、停電・断水・断ガス、通信規制が発生したと想定 参加者:対策本部長・避難誘導班・救護班・情報収集班 各〇名 |
|---|---|
| 訓練の経過報告 ※時系列でまとめる |
例) 14:00 オリエンテーションにて進行役から訓練のルールや目的の説明。 14:15 地震発生状況をスクリーンに映し出し、訓練スタート。BCP に基づく行動開始を命じる。 14:30 付与状況①として大津波警報を伝える。対策本部へどのような行動が必要か課題を投げかける。 14:45 避難指示開始のアナウンス。付与状況②としてケガ人2名発生を伝えたうえで、避難誘導班の業務について報告を求める。ケガ人の避難誘導の対応に時間がかかってしまった。 ・ ・ ・ |
| 訓練による課題と改善方法 |
例) ①道路の通行止めの情報がほかの班に共有されておらず、〇〇班の対応が遅れてしまった →道路状況やネットワーク状況など重要な情報は対策本部のホワイトボードに書いて共有する ②緊急連絡網の情報が古くなっていて安否確認連絡が届かない者がいた →〇月〇日までに緊急連絡網のチェック時期の見直しをするほか、連絡先が変更になった従業員が連絡網の作成担当者に自己申告するフローを作成し周知する |
| 訓練の様子など | 議論している様子の写真や、訓練で使用したホワイトボードの写真など |
| 報告書の作成日と作成者など | 作成日:2026年〇月〇日 作成者:〇〇〇〇 |
上記のように訓練中に起きたことや課題、議論の内容などを細かく記録します。特に重要なのは、課題の抽出です。訓練時にできなかったことや時間がかかったこと、想定が足りなかった点などを記録して、改善に活かしましょう。改善が必要な点は優先順位をつけて改善スケジュールまで設定すると、実行に移しやすくなります。
机上訓練をもとにBCPの内容をアップデートしよう
BCPは訓練や振り返りを行うことで、策定時には気づかなかった課題や問題点を洗い出すことができ、より現実に即した内容へとアップデートできます。BCP策定後はまず小規模な机上訓練から始め、徐々に訓練のレベルを上げていきましょう。













