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能登半島地震で起きた複合災害を機に、防災対策やBCP(事業継続計画)策定の重要性が高まっています。同じ場所で自社を脅かす事象が同時多発的に起こると、災害対応の困難さが増したり、被害が甚大化したりなどの影響が考えられるため、どの企業においても複合災害に備えた対策が必要です。今回は、過去の事例を紹介しながら、複合災害に備えるための対策を紹介していきます。
複合災害とは?
複合災害とは、2つ以上の異なる事象が同じ場所で発生することにより生じる甚大な被害を指します。たとえば、以下のケースなどが複合災害といえます。
- 地震が発生した数日後に豪雨が直撃し、河川氾濫や建物浸水、土砂崩れなどの被害が起きた場合(能登半島地震の例)
- 地震発生後に大雪が降り、建物が崩壊した場合
- 水害の発生により開設された避難所で、新型インフルエンザが蔓延した場合
複合災害の定義は視点によっても変わります。たとえば、ロシアで地震が発生した影響により、津波が日本に押し寄せた場合、日本側の視点では、発生した津波を一次災害と捉えることができるため、複合災害ではなく単一災害と認識されます。しかしロシアからの視点では、複合災害もしくは二次災害といえるでしょう。このように被害を受けた人や場所など、視点の違いによって複合災害か単一災害かに分かれます。
続いて、二次災害と複合災害の違いについても説明します。
二次災害との違い
二次災害は、1つの事象の影響により、別の事象が発生して起きる被害を指します。たとえば、地震の影響で津波が発生した場合は、津波による被害は二次災害であり、地震と津波の複合災害ともいえます。以下の事例もご覧ください。
- ケース1:台風による豪雨の影響で土砂災害が発生し、被害が生じた場合
→土砂災害による被害は二次災害であり、台風と土砂災害の複合災害ともいえる - ケース2:地震発生後に大雪が降り、建物が崩壊した場合
→地震と大雪による複合災害ではあるものの、地震の影響で大雪が発生したわけではないため二次災害とはいえない
過去の複合災害の事例

複合災害に備えるには過去の経験や教訓から学ぶことが必要です。能登半島地震をはじめ、4つの複合災害の事例を紹介します。
事例1.能登半島地震
2024年の元旦、石川県能登地方を震源とする最大震度7の地震が発生しました。この地震により、土砂崩れや地すべりなどの被害が発生し、さらには地盤が隆起するなど、地形の変動も生じました。
同年9月21日から22日にかけて、復旧途中の被災地へ追い打ちをかけるよう、奥能登で豪雨が発生。被災地は土砂崩れや地すべり、河川の氾濫などの被害に見舞われました。地震により地盤が脆弱化していたこと、加えて山間部に残存していた大量の土砂・流木が下流に流れたことなどが、被害を大きくした要因と見られます。
事例2.東日本大震災
2011年3月11日に起きた東日本大震災では、マグニチュード9を超える大規模な地震の影響で津波も発生し、建物が全壊または半壊したり、多数の死者数が出たりなど、甚大な被害をもたらしました。
地震と津波による複合災害だけでなく、この影響で福島では原発事故も起きています。福島第一原発事故は、国際原子力事象評価尺度(INES)でもっとも高いレベル7に分類されるほど、深刻な原発事故といわれています。多くの住民が避難を余儀なくされたほか、放射性物質による農作物の汚染などの風評被害が発生し、経済にも大きな影響を与えました。
事例3.関東大震災
1923年9月1日に発生した関東大震災は、約10万5千人の死者や行方不明者数を出した大災害です。このうち約9割が火災による被害でした。地震が起きた時刻が昼時だったこともあり、台所などから火災が発生したと考えられています。
さらに日本海側に接近してきた台風の影響により旋風が発生し、広範囲に急速な延焼を起こしました。建物が密集していた東京の下町では、特に被害が拡大し、3日3晩燃え続けていたといわれています。
関東大震災の3週間後にはまた台風が起き、神奈川県での土砂災害や東京下町の水没などの複合災害を引き起こしています。
事例4.新潟県中越地震
これまで地震後に別の事象が発生したことによる複合災害を紹介してきましたが、新潟県中越地震は上記とは異なるケースとなります。
2004年10月20日頃、中越地方では台風23号の襲来により降雨が発生しました。降雨による直接の被害はなかったものの、地下水位が高い状態にあったため液状化が発生。同年10月23日、最大震度6強の地震が発生し、地盤の強度が下がった状態のエリアでは地すべりやがけ崩れなどの複合災害につながりました。もともと土砂災害の多い地域だったことも、被害拡大の一因といわれています。
複合災害への備え・対策とは?

複合災害に備えるため、事前に取り組んでおきたい対策について詳しく解説します。
災害リスクの確認
まずは自社を脅かす災害リスクについて把握することが必要です。たとえば、事業所のある地域について、津波や洪水、土砂災害などのハザードマップでそれぞれリスクを確認し、自社への影響度を分析しましょう。
ハザードマップは各地方自治体のホームページで確認できます。自治体によっては、火災や建物倒壊の危険度などをまとめたマップを提供しているので、こちらも参考にしてください。また、国土交通省が無料で提供する「重ねるハザードマップ」が、災害リスクの分析に便利です。同サイトは住所を入れるだけで、複数のハザードマップを重ねて確認できます。
過去の災害事例などからリスクを分析することも重要です。一般財団法人消防防災科学センターのホームページでは、地域の災害事例を調べることができます。
重ねるハザードマップ|国土交通省
過去の災害記録や災害史等を調べる|一般財団法人消防防災科学センター
職場の事前対策
分析したリスクをもとに事前対策を講じましょう。地震や洪水、火災など、災害リスクによって対策は異なります。以下に対策の一例を紹介するので、参考にしてみてください。
| 災害リスク | 対策例 |
|---|---|
| 地震 |
|
| 洪水などの水害 |
|
| 火災 |
|
また、災害の種類に限らず、共通で実施すべき事前対策もあります。
- 安否確認方法の確立
- 避難経路や避難場所の確保
- データのバックアップ
- 備蓄品や持ち出し品の準備
上記のうち、注意したいのが避難経路や避難場所の確保です。避難経路と避難場所は災害リスクごとに設定する必要があります。たとえば地震の場合は建物などの倒壊リスクの少ないルートを選ぶことが重要であり、津波では2階以上の高い場所への避難が必要です。地域の避難所がまとまった自治体の防災マップなども確認しましょう。
複合災害に備えたBCPやマニュアルの作成
複合災害による人的被害や物的被害を防止したり、危機的状況でも事業を継続したりするために、BCPの策定やマニュアルの整備が必要です。BCPは、あらゆる脅威の発生時においても事業継続を実行するためのオールハザードの計画であることから、インシデントに限らず緊急時の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を守る戦略を練ります。複合災害が起きても、被害を最小限に抑え、事業継続活動へつなげていくには、事前のBCP策定が欠かせません。
一方、マニュアルはBCPをもとに具体的な行動手順をまとめた手順書です。インシデントごとにマニュアルを作成することが基本ですが、インシデントごとに共通して発生する経営資源の喪失(停電、システム停止など)に着目して対策をまとめるなど、対応の幅を広げる工夫が必要となります。
以下でBCPの策定方法や、関連マニュアルの作成方法を解説しているので、参考にしてください。
訓練の実施
職場の防災対策やBCP策定だけでは、複合災害の備えとして不十分です。BCPやマニュアルを作成したあとは、必ず複合災害に備えた訓練を実施しましょう。
定期的に訓練を実施することで、災害発生時の行動手順や考えが従業員に定着し、事業継続力を高めることができます。また、訓練後にはBCPの内容や訓練結果の分析・見直しを行い、その都度、改善を行うことが重要です。PDCAサイクルの仕組みを作り上げ、BCPやマニュアルをアップデートしていきましょう。
複合災害に備えてまずはBCPの策定を
現在、日本では気候変動に伴い気象災害が頻発化したり、大規模地震が予測されていたりなど、複合災害の危険性が高まっています。複合災害に備えるには、自社を脅かす災害リスクや、その影響を具体的に想像し、対策を練ることが必要です。
甚大な被害をもたらす複合災害は、事業継続にも影響を与えます。複合災害による事業停止などのリスクを防ぐには、オールハザードの戦略をまとめたBCPの策定が欠かせません。複合災害への対応力を高めたい企業は、まずBCPの策定から始めてみましょう。













