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富士山噴火に備えるには?企業の事業継続の策定ポイントと対策

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活火山である富士山は、大規模な噴火から300年以上が経過しており、“いつ噴火が起きてもおかしくない”と言われています。富士山が噴火した場合、火山近傍だけでなく降灰による影響が広範囲に及ぶ可能性があるため、首都圏の企業も対策が必要です。

ここでは「首都圏における広域降灰対策ガイドライン」の視点も取り入れた、事業継続計画(BCP)の策定方法やポイントを解説します。あわせて、企業が富士山噴火に備えて行うべき具体的な対策も紹介します。

富士山噴火による首都圏への影響

富士山噴火が発生した場合、富士山付近の地域だけでなく、首都圏に降灰による影響が及ぶ可能性があります。特に秋から冬にかけては、風向きの関係で首都圏に大きな影響が及ぶと予想されており、十分な注意が必要です。

降灰が発生すると、以下のように交通インフラをはじめ、電力や水道などのライフライン、建物など広範囲に影響が出ます。さらに健康にも影響を及ぼすため、事前の備えが必要です。

降灰によって生じる主な影響一覧
鉄道微量の降灰で地上路線の運行が停止。 大部分が地下の路線でも、需要増加や車両・作業員の不足等により運行停止や輸送量の低下が発生。
道路乾燥時10cm以上、降雨時3cm以上の降灰で二輪駆動車が通行不能。当該値未満でも、視界不良による安全通行困難及び、道路上の火山灰や鉄道停止に伴う交通量増等による速度低下や渋滞が発生。
航空降灰が0.4mm以上になると滑走路等の除灰が検討され、2mm以上になると除灰が必要とされ、除灰作業が行われるまでの間、滑走路が利用不可。 大気中に火山灰が存在する空域では、航空機は迂回等の措置が必要。
物資一時滞留者や人口の多い地域では、少量の降灰でも、買い占め等による食料及び飲料水等の売り切れが生じる。交通支障が生じると、物資の配送や店舗の営業困難等により生活物資が入手困難となる。
電力降雨時3mm以上の降灰で碍子(がいし:電線等を支える器具)の絶縁低下による停電が発生。 数cm以上の降灰で火力発電所の吸気フィルタの交換頻度の増加等による発電量の低下。電力供給量の低下が著しく、需要の抑制や電力融通等の対応でも必要な供給力が確保できない場合は、停電に至る。
通信噴火直後には利用者増による電話の輻輳が発生。降雨時に、火山灰が基地局等の通信アンテナに付着すると、通信を阻害。停電エリアの基地局等で非常用発電設備の燃料切れが生じると、通信障害が発生。
上水道原水の水質が悪化し、浄水施設の処理能力を超えることで、水道水が飲用に適さなくなる又は断水となる。 停電エリアでは、浄水場及び配水施設等が運転停止し、断水が発生。
下水道降雨時、下水管理(雨水)の閉塞により、閉塞上流から雨水があふれる。停電エリアの処理施設・ポンプで非常用発電設備の燃料切れが生じると下水道の使用が制限される。
建物降雨時30cm以上の降灰量で木造家屋に火山灰の重みにより倒壊するものが発生。 体育館等の大スパン・緩勾配屋根の大型建物は、積雪荷重を超えると損壊するものが発生。 5cm以上の降灰量で、空調設備の室外機に不具合が生じる。
健康被害目・鼻・のど・気管支等に異常を生じることがある。 呼吸器疾患や心疾患のある人々は症状が増悪する等の影響を受ける可能性が高い。

出典:首都圏における広域降灰対策ガイドライン|内閣府

富士山噴火の歴史

富士山の噴火は、有史以降、詳細不明のものを含めて17回の記録があります。最初は781(天応元)年の奈良時代に発生しました。

このうち大規模なものとしては、1707年の宝永噴火が挙げられます。南海トラフ地震で最大震度だったといわれる宝永地震の49日後に発生しました。このことから、近年発生が予測されている南海トラフ地震が起きた場合、津波だけでなく、富士山噴火を誘発する危険性があると考えられています。

このような事態に備え、首都圏の企業も富士山噴火への対策を講じる必要があります。

富士山の噴火予測の現状

現在、技術革新は進んでいるものの、噴火の時期や規模などを精度高く予測することが困難な状況です。また、風向きや風量によっても降灰の状況が変わるため、あらかじめ正確に被害想定を把握することは難しいといえます。

近年、新たな噴火口が見つかったという調査報告も出ている状況であり、どの企業においても早めの対策が重要です。どのような被害レベルの噴火が起きたとしても対応できるよう、状況に応じた準備を進めましょう。

BCPの策定手順とポイント

内閣府は、2025年3月28日に「首都圏における広域降灰対策ガイドライン」を公表しました。こちらのガイドラインは、富士山が噴火した場合の首都圏の対策を取りまとめた資料です。

同ガイドラインの情報も取り入れながら、BCPの策定手順やポイントを以下の流れで解説します。

  1. 想定される被害を分析する
  2. 自社のリスク要因を洗い出す
  3. 具体的な戦略を考える
  4. 訓練や見直しの計画を立てる

ステップ①想定される被害を分析する

BCPは地震やパンデミック、サイバー攻撃など、あらゆる危機的状況にも対応できるようにするためのオールハザードの計画です。まずは富士山噴火に限らず、さまざまなインシデントが発生した場合に企業が受ける影響を考えましょう。分析の結果、特に影響の大きい事業を中核事業として選定し、戦略や対策を練っていきます。

被害想定の分析は具体的なシミュレーションが必要です。富士山噴火による影響に関しては、「首都圏における広域降灰対策ガイドライン」にて、以下のようにレベル別の被害想定がまとめられています。こちらも参考にしながら、危機的状況下における企業への影響度を分析してみてください。

対策を検討するに当たって想定する被害の様相
ステージ4ステージ3ステージ2ステージ1
被害の様相の概要降灰量30cm以上
降灰後土石流の危険がある
降灰量3cm以上30cm未満で被害が比較的大きい降灰量3cm以上30cm未満で被害が比較的小さい降灰量微量以上3cm未満
  • 降雨時に木造家屋が火山灰の重みで倒壊するおそれがある。
  • 30cmに満たなくても降灰後の土石流が想定される地域では命の危険がある。
  • 輸送手段は大きな道路等しか確保できず、鉄道も停止。電力障害等が大規模となる。
  • ライフラインの復旧に時間を要し、社会経済活動にも影響大。
  • 直ちに命の危険はないが、物資供給も不十分で、生活維持がぎりぎり。
  • 比較的早期に主要輸送手段を確保し維持が可能、更に1日あれば電力等ライフラインがおおむね稼働。
  • 不便はあるが、一定レベルでの生活・社会経済活動は維持可能。
  • 鉄道等が停止する可能性がある。道路の通行やライフライン等が一時的に停止する可能性はあるが、長時間とはならない。
  • 多少の不便はあるが、通常の生活・社会経済活動は維持可能。

出典:首都圏における広域降灰対策ガイドライン|内閣府

また、内閣府や総務省消防庁などで構成される「富士山火山防災協議会及び富士山ハザードマップ検討委員会」によって作成された富士山ハザードマップも参考になります。首都圏の企業にとっては、このうち「降灰の可能性マップ」が被害予測の参考になるため、ぜひチェックしてみてください。

降灰の可能性マップ

ステップ②自社のリスク要因を洗い出す

次に、インシデント発生時、中核業務においてリスク要因となる経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を洗い出します。こちらのステップも富士山噴火に限定せず、あらゆるインシデントでリスクを想定しましょう。

ちなみに、富士山が噴火した際に首都圏の企業に生じる経営資源のリスクは、以下のような例が考えられます。ぜひ分析の参考にしてください。

  • 道路の通行不能や交通インフラが麻痺することにより、原材料が調達できなくなる
  • 送配電線が切断され、システムや設備が使用できなくなる
  • 火山灰を吸い込んだ影響で、健康被害が生じ、従業員が出社できなくなる
  • 建物内に火山灰が吹き込み、情報システムが故障する
  • 故障した生産設備を早急に買い替えるなど、予想外の出費で一時的な資金不足に陥る

ステップ③具体的な戦略を考える

上記で洗い出したボトルネックを解消するための具体的な戦略を練ります。たとえば富士山噴火に限らず、地震やサイバー攻撃などが起きた際、共通して起きるリスクとしては停電やシステム停止などが考えられます。トラブルが起きた際に、“どのような手順で復旧対応を行うか”を明確にすることが重要です。

インシデント発生から事業継続までの流れを想定し、タイムラインに沿って行動計画を立てましょう。その際、目標復旧時間(RTO)と目標復旧レベル(RLO)の設定も必要です。

また、富士山噴火だけでなく、地震や洪水などの自然災害では事業場が被災して使用できなくなる事態が考えられます。このような時代に備えて、代替拠点を用意するといった戦略も有効です。

あわせてインシデント発生時のリスクを軽減するための事前対策も講じましょう。非常用の発電機を用意する、出社できない場合に備えてリモートワーク体制を整備する、帰宅困難者対策として備蓄を準備するなどの事前対策が考えられます。

ステップ④訓練や見直しの計画を立てる

最後に、事前対策やBCPの見直し・改善、教育・訓練などの実施体制やスケジュールについて計画を立てましょう。BCPは策定して完了ではなく、その後の改善と更新が非常に重要です。事前に計画を立てて、PDCAサイクルを回しながら、BCPのブラッシュアップを行っていきましょう。見直しをする際は、「首都圏における広域降灰対策ガイドライン」や富士山ハザードマップの更新にも留意し、最新の情報で計画を改善していく視点が欠かせません。

また、特に重要なのは教育や訓練の実施です。多くの企業にとって火山噴火は未経験の事態であるため、定期的な訓練が事業継続力を高めます。

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富士山噴火に備えた企業の対策例

富士山噴火に備えた具体的な対策もご紹介します。降灰への被害を最小限に抑えるには、非常用の発電機に火山灰対策フィルターを設置する、火山灰の堆積に備えて事前に屋根の強度確認や補強を行うなどの方法が考えられます。

備蓄はゴーグルや防塵マスクのほか、火山灰の除去作業時に使用するほうきやちり取りなどの用意が必要です。電子機器などを火山灰から守るためのゴミ袋も、用意しておくと役立ちます。

さらに、情報の収集方法もあらかじめ定めておくことが重要です。気象庁の降灰予報に加え、国や自治体の情報を効率よく収集する体制を整えておいてください。また、降灰のレベルによって避難行動が変わる点にも注意しましょう。火山灰が降っている間はむやみに外出せず建物内にとどまることが基本ですが、降灰量3cm以上(ステージ3・4)と予測される場合は避難が必要です。噴火直後など、火山灰の大量に降っている時間帯は鉄筋コンクリート製の頑丈な建物にとどまり、状況が落ち着いてから影響の少ない他地域へ避難します。

富士山噴火だけでなく、地震や洪水などにおいても共通の対策となりますが、人命安全確保のための準備も欠かせません。まず、ハザードマップや社内の状況をもとに避難経路をあらかじめ決め、従業員への周知と避難誘導の手順を定めておきましょう。降灰時は視界が悪化し、通常の避難経路が使えなくなる場合もあるため、複数の経路を確保しておくことが重要です。

あわせて、緊急時に従業員の安否を迅速に把握するための安否確認方法も事前に確立しておく必要があります。安否確認システムを導入しておくと、担当者が個別に連絡を取ることなく従業員の状況を一括で収集・集計できるため、初動対応の迅速化につながります。

首都圏企業は、事業継続のリスクになりえる富士山噴火に備えよう

富士山が噴火した場合、周辺の地域だけでなく、首都圏の企業にも降灰による被害が及ぶ可能性が高いと考えられます。現状の技術では、いつ、どのような規模で噴火するかを正確に予測することが難しいため、普段からの備えが企業の事業継続の鍵を握ります。

具体的には、富士山噴火への備えとして備蓄の準備や事業場への対策を講じることが必要です。さらに、「首都圏における広域降灰対策ガイドライン」の視点を取り入れたBCPの策定、またはブラッシュアップもぜひ実施してみてください。

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この記事を書いた人
「安否確認Navi」編集部
阪神淡路大震災をきっかけに開発した緊急連絡/安否確認システム「エマージェンシーコール」の販売を通じ、お客様の危機管理に関する様々な課題をヒアリング。その豊富な知識とノウハウをコンサルティングやコラムに展開。
この記事の監修者
徳山 英治Tokuyama Eiji
危機管理コンサルタント
BCAO認定 事業継続主任管理士/防災士/企業危機管理士/個人情報保護士
大手医薬品卸売企業向けシステムをはじめ、約20年にわたりITプロジェクトのマネジメントを経験。東日本大震災を契機に「ICTを活用した新しい危機管理」の必要性を感じ、危機管理コンサルタントへ転身。企業のBCP策定から訓練の実施・社内研修・講演まで幅広く支援しており、これまで数百社の危機管理体制の構築に携わる。共著に『はじめての企業防災BCP入門』。

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