目次
リスクコミュニケーションとは、起こりえるリスクについて関係各所とコミュニケーションを行うことで、理解を得たり、その影響を最小限に抑えたりする取り組みのことです。
ここでは近年注目を浴びるリスクコミュニケーションについて、その定義や目的を解説します。実際にリスクコミュニケーションを実施している企業や団体の事例もあわせて紹介します。
リスクコミュニケーションとは?
リスクコミュニケーションとは、企業や団体を取り巻くリスクを事前に関係各所と共有することを指します。リスクコミュニケーションには、事前のコミュニケーションと事後のコミュニケーションがあり、それぞれの役割は以下の通りです。
- 事前コミュニケーション:リスク対策のために事前に関係者と行うコミュニケーション
- 事後コミュニケーション:インシデント発生後に関係者と行うコミュニケーション
また、リスクコミュニケーションは厚生労働省や経済産業省などの行政機関によって、定義が多少異なります。以下で、各省におけるリスクコミュニケーションの定義をまとめました。
厚生労働省における定義
厚生労働省のサイトでは、「食品の安全に関するリスクコミュニケーション」についてその概要がまとめられています。
厚生労働省におけるリスクコミュニケーションの定義は、「消費者や事業者、行政担当者などの関係者の間で情報や意見をお互いに交換すること」です。その一例として、意見交換会やパブリックコメントなどが挙げられています。
経済産業省における定義
経済産業省のサイトでは、化学物質管理に関するリスクコミュニケーションの定義が示されています。ここでの定義は、「化学物質を扱う事業者が、そのリスクに関して地域住民と自治体とコミュニケーションを取ること」です。化学物質を扱う事業者は、その環境リスクを踏まえて適切な管理と関係者間とのコミュニケーションを取ることが求められます。
環境省における定義
環境省ではリスクを、「環境リスクや自然災害リスク、社会経済活動に伴うリスクなど、生命や経済活動において望ましくない影響を与える可能性」と定義しています。そのうえでリスクコミュニケーションは、リスクマネジメントを適切に行うために、「関係者間でリスクに関する情報を相互に共有・理解すること」と解説しています。
文部科学省における定義
文部科学省では、リスクコミュニケーションに関心のある研究者向けに、基本概念や実施方法をまとめた資料を公開しています。こちらの資料によれば、リスクコミュニケーションの定義は「リスクへの適切な対応のために行われる多様な関係者の相互作用を重視したコミュニケーション」です。多様な関係者とは、市民や行政関係者、メディア、事業者、専門家などを指します。
リスクコミュニケーションの目的

リスクコミュニケーションの目的は、関係各所から理解を得て、信頼関係を築くことです。あらかじめ関係各所と意見を交換することで、多角的な視点からリスク管理ができるというメリットもあります。また、企業防災の観点では災害などによる企業の被災を想定したリスクコミュニケーションが重要です。相互理解や信頼関係を元に、事前対策を実施したり、より良い意思決定を行ったりすることで、災害発生時の被害を最小限に抑え、迅速な復旧へとつなげられます。
こうした目的を達成するには、リスクコミュニケーションを定期的に、かつ継続して実施することが必要です。
リスクコミュニケーションの実施手順とポイント
事前と事後のコミュニケーションを含めた、リスクコミュニケーションの実施手順を解説します。実施する際のポイントもあわせて紹介します。
事前コミュニケーション
①現状の把握
まずは現状の把握が必要です。自社を取り巻くリスクを洗い出し、リスクの分析・評価を行います。
その際、今後リスクコミュニケーションを取るステークホルダーが“リスクをどのように捉えているか”を想定することが重要です。たとえば地域住民がリスクについてどのような懸念を抱いているか、自治体側が何を知りたがっているかなど、相手方の理解を深める意識や活動が欠かせません。
そのほか、あらかじめ専門家などと意見交換を行い、客観的にリスクを捉えることも必要です。
②リスクコミュニケーションの目標設定
次に、リスクコミュニケーションを実施するうえでの目標を設定します。今後のリスクコミュニケーションの方針を定めるためにも、目標の設定と社内での共有が非常に重要です。
【リスクコミュニケーションの目標事例】
- 地域住民の不安を解消する
- ステークホルダーの価値観や関心について理解を深める
- リスクについて相互理解を深め、ステークホルダーと信頼関係を構築する
- 発災後に関係者とスムーズな情報共有を図り、連携して適切な事業継続へつなげる
③リスクコミュニケーションの対象を選定
リスクコミュニケーションは、リスクの影響を受ける関係者に対して実施する必要があります。そのためリスクの分析結果やリスクコミュニケーションの目標などをもとに、コミュニケーションを行う対象者を選定することが必要です。たとえば化学物質を扱う事業者などは、影響を与える可能性のある地域の範囲から決める、などの方法もあります。
④事前準備
続いて、リスクメッセージを伝える方法を決めます。資料や想定する質問に対する回答の準備も行いましょう。資料はわかりやすい表現を意識することがポイントです。
リスクメッセージを伝えるコミュニケーション方法は、プレスリリースや記者会見、公聴会などさまざまあります。一方的な情報発信とならないよう、双方の理解を深められるような対話型のコミュニケーションも取り入れることが重要です。
また、発災時にスムーズに関係各所とコミュニケーションが取れるよう、取引先や自治体、広報先となるメディアの連絡先を一覧で作成するほか、コミュニケーション手段を定めておきましょう。
事後コミュニケーション
⑤リスクコミュニケーションの実施
定めた方法でリスクコミュニケーションを実施します。対面型のコミュニケーションの場合、一方的な発信に終わらないよう、関係各所からの意見を受け入れる姿勢が必要です。
発災時は自社の状況を取引先や顧客などに情報発信することが、迅速な事業継続の鍵になります。そのために情報発信する内容を迅速に集約・判断することが求められます。
⑥評価・振り返り
重要となるのは、リスクコミュニケーション後の評価と振り返りです。実施後のアンケートや、意見の聞き取りなどを行い、リスクコミュニケーションの効果測定や、課題の抽出を行いましょう。これらをもとに見直し・改善活動を経て、次のリスクコミュニケーションに活かすことが必要です。
リスクコミュニケーションの事例

【製造業の事例】自動車製造業A社
自動車製造業A社の工場は、リスクコミュニケーションの一環として自治体や専門機関と連携して化学物質に関する地域懇談会を定期的に実施しています。
地域の事業者や市民などが参加する懇談会のプログラムは、工場見学や化学物質の影響に関する説明会、意見交換などで構成。意見交換の際には市民から、同社の事業が環境に及ぼすリスクや防災対策などについて質問が飛び交いました。懇談会後のアンケートでは、市民のほとんどが「事業について理解が深まった」と回答しています。
【医療の事例】医療機関B社
医療機関B社では、感染症リスクコミュニケーションについて指針を定めています。リスクコミュニケーションの対象として選定しているのは、行政や医療機関のほか、現場の医療従事者、一般市民などです。
平常時から情報提供や対話の機会などを設け、各対象者から寄せられた意見・情報をもとにリスクマネジメント体制を確立。緊急時には、平時より築き上げたこの基盤を活かし、状況の変化に応じて必要な情報の発信を行っています。
【食品メーカーの事例】食品メーカーC社
食品メーカーC社では、食品関連のリスクコミュニケーションの一環として顧客とのコミュニケーションを強化しています。その背景には消費者の食に対する安全への意識や、健康意識の高まりがありました。
顧客に対し、十分な情報提供と双方向のコミュニケーションができるよう、お客様センターをはじめとしたお問い合わせ窓口の設置、パンフレットの作成配布、セミナーなど、さまざまなリスクコミュニケーションを実施。これらのコミュニケーションで得た情報・意見を、リスク評価やリスク管理に活かしています。
リスクコミュニケーションは継続的な実施と体制整備が鍵
リスクコミュニケーションを適切に実施するには、経営者がリーダシップを取り、戦略的に取り組むことが必要です。定期的かつ継続的にリスクコミュニケーションを実施し、関係者間との連携や信頼関係の構築に努めましょう。
取引先など関係者間とのリスクコミュニケーションをスムーズにするため、ITツールを活用するのもひとつの手です。「BCPortal」にはグループトーク機能が搭載されており、取引先をはじめとした関係者間でリアルタイムのコミュニケーションが可能です。リスクコミュニケーションを効率化したい企業のご担当者様はぜひお問い合わせください。













