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本社移転をBCP見直しの好機に。震度6強を想定した模擬体験で見出した、帰宅困難者対策とBCP強化の気づき

本社移転をBCP見直しの好機に。震度6強を想定した模擬体験で見出した、帰宅困難者対策とBCP強化の気づき
カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社

サマリー

■ 課題

全国の約800店舗を守るためBCPの構築を優先的に進めてきた一方、渋谷から横浜への本社移転により社員の土地勘がなく、被災時の初動対応や復旧計画に不安を抱えていました。

■ 弊社を選んだ決め手

弊社の情報交流会において、担当者が本社移転に伴う不安を相談したところ、BCP見直しの第一歩として模擬災害体験演習のご相談をさせて頂いたことが決め手となりました。

■ 気づき

店舗対応を優先するあまり本社の初動・復旧対応や一斉帰宅抑制への備えが不足していることを痛感し、災害対策本部の体制整備や対応フローのマニュアル化の必要性を強く感じました。

店舗優先のBCPに潜んでいた死角。手薄となっていた「本社の初動対応」

 横浜・みなとみらいに本社オフィスを構えるカルチュア・コンビニエンス・クラブは1月22日、インフォコムの支援を受けて模擬災害体験演習(モックディザスター)を実施。三浦半島断層群でマグニチュード7.3の地震が発生したと想定し、初動対応、帰宅困難者対応、事業継続の課題を確認しました。

「蔦屋書店」「TSUTAYA」を展開する同社は2021年からBCPの策定・運用に本格的に着手。全国約800の店舗を守ることを最優先に、店舗スタッフの安否確認や安全確保の体制整備に取り組んできました。

さらに、事業継続についても、首都直下地震による本社機能の停止を想定し、大阪や仙台などの地方拠点で機能を代替する体制を構築。災害対策本部の設置訓練などを重ねてきました。

「当社は約9割の人材や機能が本社に集中。BCPはまず、本社が動けなくなったときほかの拠点でどうカバーするかの検討から始めました」とリスク・コンプライアンス統括部BCP・BCM推進グループリーダーの筑紫氏。

本社機能の代替戦略を中心にBCP構築を進めてきた同社。体制構築を進める中である課題が見えてきました。それが、「被災した『本社そのもの』の初動計画と復旧計画」です。

「見知らぬ街で被災したら?」本社移転で浮き彫りになった社員の安全確保への不安

 筑紫氏によると、これまで同社では本社機能の代替戦略に重点を置いてBCPを整備してきため、「被災した本社社員がどう身を守り、どう動くか」という観点は十分に具体化されていなかったといいます。

こうした課題感を感じていたタイミングで、社屋移転の話が持ち上がったということです。約30年間居を構えた東京・渋谷地区から、まったく見知らぬ横浜・みなとみらいへの移転でした。

『勝手知ったる』というとおり、地の利の安心感は大きい。どこに何があるか、いざというときどこへ行けばいいかをみな熟知しています。しかし、横浜は未知の場所。その不安をインフォコムさんの情報交流会で相談したことが、今回のモックディザスター実施に繋がりました」

昨年5月の移転完了を機に、懸案の被災した『本社そのもの』の対策に着手。今回のモックディザスターはその第一歩の位置づけです。

演習の冒頭、筑紫氏は参加者に「まずはこの横浜の地で被災したとき何が起きるかを体験いただき、それぞれの立場、職種で何をしないといけないかを考えてほしい」と呼びかけました。

震度6強の発生をリアルに想定した机上演習。地図と模造紙で「災害対応プロセス」を可視化

 当日は役員はじめ総務・人事、店舗支援・管理などに携わる社員約30人が参加。5つのグループに分かれ「初動対応」「帰宅困難者対応」「事業継続」の3つのシーンで模擬演習を行い、災害対策本部の役割分担と情報整理、帰宅抑制の解除と帰宅ルート、本社機能の継続を検討しました。

想定は横浜市南部で震度6強。ただし本社ビルは免震構造のため大きく揺れることなく負傷者なし、天井落下なし、社員と家族の安否確認は完了済みという設定です。

そこへライフラインの停止や交通機関の麻痺、主要道路の通行止めなど、公共施設などの状況が次々付与されます。参加者は次々と提示され情報を元に、大判の地図と模造紙にペンや付箋で情報を整理しながら対応について話し合いました。

演習をコーディネートしたインフォコム危機管理コンサルタントの高橋氏は、各シーンの論点を説明。

災害対策本部の役割分担と情報整理については「何でも自分たちで処理しようと考えないことが大事」といい「対策本部は各部署に指示を出し、集まってきた情報を分類・分析したうえで社長、役員らにエスカレーション、そこで意思決定されたことを社内外に展開するのが役割」と話しました。

そのうえで「人に役割を与えるのではなく役割に人をあてはめる。災害時は人的リソースも限られるので、その場にいる人でやらないと対応がまわりません。やるべき仕事を事前に割り振り、一覧できるチェックリストを用意しておくことが肝要」としました。

帰宅困難者対応は、緊急車両の優先確保や二次災害防止の観点から3日間の一斉帰宅抑制を必須としたうえで、重要なのは「解除基準」だと強調します。

帰宅抑制は行政の要求なので必須ですが、3日後に全員が一斉に帰ると同じ混乱が起こります。社員の安全を優先に、どのような条件で解除するか、具体的に検討しておく必要があります

また、本社機能の事業継続は、建物が無事でもライフラインや交通機関の被害で継続が難しい場合あることに言及。本社機能の代替戦略の検討にあたり、単に代替拠点を決めるだけでなく「重要業務の優先付けや業務スキルを持つ社員の選抜、備品・施設の事前確認を行っておくことが必要」と解説しました。

「土地勘のなさ」と「帰宅抑制の壁」に直面。模擬体験だからこそ得られた、現場のリアルな課題

 演習課題を一通り終えると、参加者は他のグループをまわって意見交換。その後振り返りを行い、気づいた点やマニュアル化が必要な点を発表しました。

振り返りの中で、災害対策本部の役割分担では「何をおいても本社被災時の組織体制整備が先決」という声が多数。自営消防隊との連携やリモートワーク勤務者の位置付け、休日発災時の対応など「クリアにしないといけないことが多いとわかった」「組織体制を整えたら訓練も必要」いう意見が出ました。

情報整理については、多くのグループが「模擬体験でイメージが沸いた」と発言しました。「誰が何をどう集約し、どうエスカレーションするかのフローの明文化は不可欠」「漠然と情報を集めていると混乱が広がる。効率化のためには事前のカテゴリ分けが重要」といった指摘が共有されました。

また、本社周辺の土地勘のなさを痛感したという声も目立ちました。

「主要道路と主要駅は最低限知っておくべき」「スマホのデジタル地図は通信・電源が切れたら使えないので、紙の地図を災害グッズに含めるべき」「(徒歩帰宅に備え)同じ方向の社員同士のコミュニケーションを日頃から密にすることが必要」などの提案が出ました。

帰宅困難者対応は、想像以上の困難が予想されるという見方が複数。

「家族のいる社員が3日間帰宅を抑制できるか懐疑的」「帰りたい人は帰していいとはいえない。誰がどこでどう線引きするのか、基準策定は思った以上に難しい」といった感想が出ました。

また「最低限3日間はセルフジャッジを禁ずるとして、不満は相当出る。今回のシナリオでは2日後から『帰りたい』という社員が出る想定だが、その裏ではいろいろなトラブルが起きているはず。そうした現実を体感するためにも、まずは宿泊訓練をしたほうがいい」という意見もありました。

そのほか「今日の演習に参加したメンバーはさまざまな気づきを得られたが、それが広く社員に浸透しないとBCPは進まない。こうした演習機会を今後も増やしてほしい」という要望も出ました。

マニュアルは手順書より「時系列のチェックリスト」へ。危機管理コンサルタントが指南する災害対策の正しい進め方

 参加者の振り返りを聞いたインフォコムの高橋氏は、マニュアル作成のポイントなどをアドバイス。

災害時の帰宅ルートについて「『何㎞まで徒歩圏内』と決めるだけでなく、それがどの辺りかをイメージすることが重要」と指摘、そのうえで「各方向の地図を同じ縮尺で用意してボックスに入れておけば必要なときすぐ取り出せる」と提言しました。

また、同じ方向に住む社員の集団帰宅も、犯罪に巻き込まれないために重要と解説。ただし会社が社員の自宅住所を事前に収集するのは個人情報保護の観点から難しいとし「郵便番号だけ聞いて町名までプロットし、それをルート別に振り分けておくのが現実的」と述べました。

災害対策本部については、多くの場合は全社対策本部と現地対策本部の二つが立ち上がると説明。うち現地対策本部は「自衛消防隊が最初の主役」といい「自衛消防隊の訓練は消防法に基づいて行われているが、対策本部との連携訓練が十分でないケースもあります。情報受け渡しの方法やタイミングなども確認しておいてほしい」と要望しました。

一方、全社対策本部は、時系列にそって誰が何をやるのかを目的ごとに分類し手順書に明記、その通りに行動することが重要とあらためて強調しました。

「そこさえ明確にしておけばどんな災害でも8割~9割は同じ手順で対応できる。さらに、時系列の行動を一覧化したチェックリストをつくっておけば、いちいち手順書を見る必要もなくなる」と強調しました。

最後に、マニュアル類を作成したらそれをもとに訓練を行うことを推奨。「手順どおりやってみて、うまくいかなければ課題を抽出しブラッシュアップする。社員向けの教育訓練プログラムも取り入れて応用力を鍛えてほしい」と呼びかけました。

役員が語る「3つの気づき」。社会的責任の再認識と、手薄だった本社安全確保への決意

 担当役員として参加したカルチュア・コンビニエンス・クラブ常務取締役CFO(現取締役副社長COO)の脇尊裕氏は、演習を振り返り、三つの「気づき」について言及しました。

一つ目は、一斉帰宅抑制という社会的要請に対する責任の重さです。

「首都圏災害時に企業が取るべき行動指針が公になっているのに対し、準備ができているかというと、まだ足りない点が多いのが実情。当社のBCPは店舗の安全確保とサービス継続に重きを置いてきましたが、発災後の行動いかんでは社会に負の影響を与えるおそれもある。そうした視点が極めて重要だと、あらためて認識しました」

そして、二つ目は、本社社員の安全確保に対するまなざしが相対的に不足していたという気づきです。これは、今後の演習とBCP見直しの中核となる論点でもあります。

「店舗とサービスを守ることに注力するあまり、本社の初動・復旧対応と安全確保が後手にまわってきた」といい「特に自分たちのいる地理的環境への理解が徹底して足りないことを再確認しました」と述べました。

三つ目は、準備と訓練を計画的・体系的に行っていくことの重要性です。

「一気に100点にするのは難しい」としながらも「今日の演習プログラムを取りかかりとして、できることから着手。特に、いつ誰が何をするのかのフローの明文化は最重要と実感したので、しっかりマニュアルに定めていきたい」と話しました。

そして、脇氏は今回の取り組みが決してゼロからの出発ではないと強調します。

「当社は設立当初から店舗の状況把握や安全対策に取り組んできましたから、支援やコミュニケーションの体制はできています。培った企業風土をそのまま生かせる。演習・訓練や教育も続けながらBCPの見直しを進めていきたい。」としました。

また、BCP・BCM推進リーダーの筑紫氏も、今回の演習を前向きに評価しました。

「できていないことだけでなく、『できているのに周知されていないこと』が多いと認識できたことも大きな成果です。しっかり改善していきたい」と話しました。

「今後は演習で得られた気づきを参加メンバーから部署内へ伝えてもらい、災害時対応への関心と当事者意識を高めたいと考えます。そのうえで、BCP見直しを来期計画の重点項目として位置付け、具体的な改善に着手していきます。」

「カギを握るのは社員の一人ひとりの意識。私たちBCP担当が旗を振っても、実際に動くのは現場のみなさんです。現場は目の前の業務がありますから、常に災害時対応を考えているわけにはいきません。だからこそ、防災・BCPの重要性を理解してもらうよう継続的に活動していかないといけない」と力を込めました。

本社移転という転機をきっかけに始まった今回の演習。

それは単なる訓練にとどまらず、「備える文化」を組織全体に根づかせるための第一歩となりました。

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