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帰宅困難者が陥る4つの罠
「家族が心配だ」「一刻も早く家に帰らなくては」そんな思いの人々が東京の町にあふれた2011年3月11日。電車、地下鉄はストップ。バス、タクシーは渋滞に巻き込まれ、歩いた方が早いくらい。歩道にも人があふれかえり、歩くスピードは牛歩状態でした。会社の前を通っている明治通りはまるでお祭りの沿道のように異様な光景となっていました。みなさん一体どこまで歩くのでしょうか。横浜?大宮?町田?実際、都心から隣県の町まで歩いた方は多くいました。11日当日は都心から約20kmの距離を移動するのに徒歩で約5時間かかりました(※筆者体験による)。
1番目の罠:自宅までの道がわからない。
電車移動中心の方に多く陥りがちな罠です。東西南北どっち方向に行けばいいのか、線路・駅名では把握しているのだけれど、どの道を行けばいいのかわからない。挙げ句、遠回りしてしまう。
そんなときはスマートフォンの地図アプリの使い所です。ナビの役割を果たしてくれる優れものもいます。歩くならどの道を行けばどのくらいで到着するのか教えてくれます。ただし災害発生時、情報収集や緊急連絡ツールとして携帯電話は非常に重宝しますので、使い過ぎには注意しましょう。電池が切れてしまうと、肝心なときに迷う羽目になってしまいます。
2番目の罠:連絡がとれない
災害発生時、携帯電話は使えないと思ってください。電話回線が込み合っていてつながりにくくなっています。携帯電話は情報収集ツールとして利用します。もし、会社で安否確認システムを利用している場合は、そちらを利用しましょう。家族への連絡等は電気通信事業者が提供する安否確認システムを利用しましょう。災害伝言ダイヤル(171)もしくは災害伝言板(web171)があります。伝言の登録件数は最大20件、保存期間は最大6ヶ月です。
電話がつながらないからといって、各自が何度もリダイヤルすることによって電話回線はより圧迫され、緊急的に必要としている災害対策本部や被災地などより緊急連絡が必要な場所で使用ができなくなってしまいます。被災地のことを思うのであれば、少しの間我慢をお願いします。
3つ目の罠:トイレ難民
「絶対に家まで帰るんだ!」と意気揚々と出てきたものの、道のりは長くだんだんと疲労が蓄積されてくることでしょう。長く慣れない帰り道の途中、どこにトイレがあるか知っていますか?「いやいや、トイレなんてどこにでもあるし、いざとなったらその辺のお店で借りればいいでしょ」なんて思っていると、トイレ難民になりますよ。
大きな地震の場合、電気ガスはもちろん、水道が止まってしまう場所も多く発生します。つまり、水洗トイレが使えないのです。流すことができませんから、詰まり防止のために水洗トイレは使用不可となります。期待していた沿道のお店も同様でしょう。
「男だったらその辺で・・・」ちょっと待ってください。沿道には人があふれかえっています。そもそも大人のマナーとしていかがなものでしょう。
中央防災会議の専門調査会が首都直下型地震が発生した場合のシミュレートを行った結果、東京23区ではトイレが大幅に不足し、発生から2時間後には約81万7,000人がトイレに行けなくなる状況になると試算されました。最も深刻な千代田区では4.5時間待ちの長蛇の列ができる想定です。
4つ目の罠:水・食料の確保
ウォーキングという行為は非常にカロリーを消費します。また、体内の水分も大量に消耗します。つまりお腹は空くしのども乾くのです。たかが数時間、空腹は家に帰るまでの辛抱だとしても、水分の補給は我慢がきくものではありません。季節にもよりますが、熱中症や脱水症状などより深刻な事態に陥る可能性があります。ちょうど良く、かばんの中に入っていれば良いですが、もし持っていなかった場合、「途中のコンビニで買えばいいか」と安易に考えるのは非常に危険です。コンビニエンスストアや量販店はイナゴに荒らされたかのように、水、食料が消えます。やはり皆考えることは同じ。水、食料の確保を考えるのです。自宅に到着するまでの軽食や水の準備をしてから帰宅を開始するようにしましょう。
おわりに
ここまで帰宅困難になることを前提にしつつも、それでも帰るのだと固い意思を持っている方向けに注意すべき点を挙げてきました。基本的なことですが、徒歩での帰宅は危険が伴います。距離が遠い方や水、食料を始め、服装やシューズなど準備が整っていない方は無理をせず、会社や近くの避難場所に留まることをお勧めします。東京都では企業に従業員の3日分の食料の備蓄について努力義務を課しています。駅や集客施設についても同様です。無理をして外に出て、二次災害に遭ったら元も子もありません。有事の際、帰宅の判断はくれぐれも慎重に。
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