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インフォコム「ユーザー会2026」開催レポート|AIで災害対策の未来はどのように変わるのか 〜自然災害からサイバー有事まで、激動の時代を乗り越える次世代BCP〜

記事イメージ画像:インフォコム「ユーザー会2026」開催レポート|AIで災害対策の未来はどのように変わるのか 〜自然災害からサイバー有事まで、激動の時代を乗り越える次世代BCP〜

令和8年熊本地震、令和8年8月千葉豪雨により被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。

今年発生した様々な災害をきっかけに、多くの企業で「うちの危機管理体制は本当に機能するのか」という問いが、経営層から現場の担当者へ投げかけられたのではないでしょうか。BCPは策定済み、安否確認システムも導入済み。しかし、いざ大きな災害が起きたときに、本当に対応できるのか。このような不安を感じている危機管理担当者も少なくないはずです。

2026年7月31日、当社は「AIで災害対策の未来はどのように変わるのか 〜自然災害からサイバー有事まで、激動の時代を乗り越える次世代BCP〜」をテーマに、「ユーザー会2026」を東京ミッドタウン・カンファレンスにて開催しました。

当日は、当社の緊急連絡/安否確認システム「エマージェンシーコール」、情報管理ポータルシステム「BCPortal」をはじめとする危機管理サービスをご利用いただいているお客様をお招きし、現地・オンラインを合わせて131名の方にご参加いただきました。開催直前に熊本地震が発生したことにもあり、当日ご参加いただいた皆様にとって、このテーマがより一層切実なものとして受け止められる場となりました。

本レポートでは、当日の講演内容と会場の様子をお届けします。「もし本当に大きな災害が起きたら、自社は対応できるのか。」このような不安を抱えている方にとって、自社の危機管理を見直すヒントになれば幸いです。


オールハザード・アプローチと危機管理の4機能 ― 日本大学 福田充教授
基調講演

基調講演には、日本大学危機管理学部教授の福田充氏をお招きしました。福田氏は、危機管理学、リスク・コミュニケーション、テロ対策、インテリジェンス、災害対策等の専門家として幅広い危機を長年研究し、行政・企業の危機管理体制構築に携わられてきました。

福田氏が講演で示したのは「オールハザード・アプローチ」という考え方です。
危機管理学の対象は社会すべての危機となります。

・地震、津波、台風、豪雨などの自然災害
・原発事故、交通事故などの大規模事故
・テロリズムやミサイルなどの国民保護事案
・戦争・紛争などの国際安全保障
・情報流出、サイバー攻撃などの情報セキュリティ
・新型コロナウイルスのような感染症パンデミック
など・・

社会を襲う多様な「危機」があり、企業や自治体は、どの危機が起きても対応しなければならない立場にあります。
発生頻度は低いですが被害が甚大な「ハザード系リスク」と、日常的に発生する「ライフ系リスク」の両方に目を向ける必要があると、福田氏はお話しされていました。

また、危機管理には「4つの機能」があるというお話もありました。

  • インテリジェンス:危機に関する情報を収集・分析する
  • セキュリティ:危機の発生・拡大を食い止める対策をとる
  • ロジスティクス:危機への対処に必要な物資を準備し使う
  • リスクコミュニケーション:危機に関する情報を関係者に伝え議論する

この4機能は特定の災害だけに紐づくものではなく、あらゆる危機に共通する対応軸だといいます。「サイバーセキュリティ」「テロ対策」といった特定の言葉に矮小化されがちな概念も、実は感染症対応や災害対応にもそのまま当てはまるというお話は、参加者にとって新しい気づきになりました。

もう一つ印象的だったのが「7対3の法則」についてです。危機管理は事後対応(クライシス・マネジメント)のことだと捉えられがちですが、実際に重要なのは事前の備え(リスク・マネジメント)が7割との考え方でした。事前の備えが整っていれば、発災後の対応は大きく軽減される、という考え方についても解説いただきました。

講演の最後には、AIが危機管理に与える影響について、「AIはオールハザードの危機管理を変える」とお話しいただきました。具体的には、下記の3つの視点について解説いただきました。

1. 再帰的近代化の過程で発生する新しい「危機」を指摘し、解決策を提案する(マクロ)
2. 危機管理の「機能」レベルで政策立案し、そのパフォーマンスを支援する(ミドル)
3. 危機管理の「業務」レベルで意思決定し、BCP・BCMの実践を支援する(ミクロ)

中小企業向けのAIを活用したBCP構築支援なども既に実用化が進んでいるとのことで、AIが危機管理の今後を大きく左右する存在になっていくことを、福田氏ご自身の研究や取り組みを踏まえて語っていただきました。


ユーザー導入事例講演 ー 日亜化学工業株式会社様

続いて、日亜化学工業株式会社 本社環境安全本部 環境安全部の瀬山淳様より、当社の危機管理ICTサービス「BCPortal」を活用した災害時の情報収集・発信の取り組みについてご紹介いただきました。

日亜化学工業様は、徳島県を中心に5つの生産拠点を持ち、経営層で構成される「リスク管理委員会」を設置しています。災害発生時には、各拠点の災害対策本部からBCPortalに被害情報が集まり、休日や社外にいる社員でも会社の状況を把握できる仕組みを構築しているとのことです。集まった被害情報のうち重要度の高いものは色付きで表示されるため、優先度の高い箇所から即時に対応できるよう工夫されています。他にも工場周辺の被害状況マップを作成して全社員に共有する取り組みなど、実務に即した取り組み事例を数多く紹介いただきました。

瀬山様が率直に語られたのは、「現状は情報収集・共有までしかできていない」という課題です。今後は、収集した被害情報や人員状況をもとに、どの業務を優先的に復旧させるかという事業継続の判断そのものにまでシステムを活用していきたい、という展望についてもお話いただきました。

もう一つ紹介されたのが、訓練における生成AIの活用です。従来、災害対策本部の情報収集訓練では、訓練用の想定情報(ダミーの被害情報)を人手で作成していましたが内容のリアリティがなく、作成する手間も大きな負担になっていました。そこでAIに訓練用の情報源を作成させることで、よりリアリティのある訓練が可能になったといいます。さらに、生成AIにファシリテーター役を担わせ、訓練で行われた対応への評価やアドバイスを受けることで、訓練後の議論が深まったという実践例も共有されました。加えて、大学と共同で数千人規模の避難シミュレーションに取り組んでいる事例も紹介され、訓練の質を高めるための多様な工夫が伺えました。

このように、日亜化学工業様の講演では、システムの活用状況だけでなく、訓練の質を高めるための具体的な取り組み事例までお話しいただきました。参加者にとって明日から実践に取り入れられる内容も多く、大変有意義な講演となりました。

情報管理ポータルシステム「BCPortal」の詳細はこちら

ユーザー企業同士がつながる場 ― 危機管理ユーザー情報共有会のご紹介

ユーザー会では当社の「危機管理ユーザー情報共有会」の取り組みについても紹介させていただきました。

多くの危機管理担当者が感じているのが、「社内に相談できる相手がいない」という孤独感です。この課題に応えるのが「危機管理ユーザー情報共有会」です。

この会は、当社危機管理サービスを導入いただいているユーザー企業同士が自社の課題や取り組みを主体的に共有し合う場で、「つながる」「共有」「貢献」の3つをコンセプトに運営しています。

2025年度は年4回開催し、化学メーカー様からのエマージェンシーコールの特別警報オプション活用事例、小売業様からのカムチャツカ半島沖地震発生時の対応、損害保険会社様からの能登半島地震への対応、サービス業様からの帰宅困難者対応訓練など、業種を超えたリアルな取り組みが共有されてきました。

他社の実例に触れながら自社の対策を見直すことができるのはインフォコムならではです。 導入企業様には、こうした情報交換の場もご案内しています。

AI時代の危機管理部門のあり方 〜テクノロジーと人間の意思決定のベストミックス〜

続いて、当社危機管理コンサルタントの徳山英治から「AI時代の危機管理部門のあり方 〜テクノロジーと人間の意思決定のベストミックス〜」と題し、講演させていただきました。

徳山がまず指摘したのは、お客様の関心の変化です。「BCPを策定すること」自体が目的だった時代から、「目標復旧時間(RTO)をいかに実現するか」へと関心が移りつつあるといいます。
策定した計画が、実際の災害時にどこまで機能するのか――その実効性こそが問われる時代になっています。

この実効性を阻む最大の壁が「情報コミュニケーション」の課題です。徳山は3つの課題を提示しました。

  1. 情報収集の課題:必要な情報がすぐに、継続的に入手できない。情報に偏りが生まれる
  2. 情報整理の課題:情報の真偽判断や優先順位づけが、担当者の経験に依存してしまう
  3. 情報分析の課題:情報の並び替えや必要な情報の抽出に時間がかかる

これらをすべて人手で担うのは限界があり、AIの活用が不可欠だと徳山は語ります。
ただし重要なのは、情報を集めること自体が目的ではなく、「何を判断するために、どの情報が必要か」という設計が先にあるべきだという点です。

さらに、災害対策本部のリーダーに求められる役割も変わっていくという指摘がありました。これまでのように、あらかじめ決めた計画に沿ってトップダウンで指示を出すスタイルは、想定した範囲内の対応には向いていますが、想定外の事態が起きたときに現場が指示待ちになってしまったり、本部に情報が集まりすぎて整理しきれなくなったりする面もあります。徳山は、AI時代にはこうした監視や情報整理の部分をAIに任せ、人間は状況の背景や経緯を踏まえた最終判断、経営層への説明といった部分に力を注ぐべきではないか、という考えを示しました。

そのうえで、危機管理部門は「発災後の窓口」から、平時からリスクの兆候を捉え、経営層に対して複数の対応案とそれぞれのリスク・メリットを迅速に示せる部門へと変わっていく必要があるのではないかと徳山は解説しました。


今後の当社危機管理サービスロードマップ

ユーザー会の中では、当社デジタル・サステナビリティ事業部長の中川友記、およびサービスマネジメント室長の小竹成佳より、今後の危機管理サービスのロードマップについてもお話しいたしました。

中川は、直近1年で発生した危機を振り返りながら、地震・津波・水害に加え、サイバー攻撃や国際情勢の緊迫化など、企業が備えるべき危機の種類が増えていることを指摘し、こうした危機に対応していくためには、リスクマネジメントとクライシスマネジメントの両輪を回していくことが必要になると説明しました。
多くの企業ではリスクマネジメント(平時の備え)は比較的進んでいる一方、クライシスマネジメント(発災時対応)は防災訓練や自衛消防隊のレベルにとどまっているケースが多く、多様な災害が起きている今こそ、クライシスマネジメントを再度見直すタイミングなのではないかとお話しました。

当社では、リスクマネジメントとクライシスマネジメントを強化するためのソリューションをご用意しています。事前の準備から防災の対応、さらに事業継続の対応まで、コンサルティングとITサービスを組み合わせて一連の流れを支援できる点が特徴です。

講演では、中長期のAI活用構想として「自律する危機管理DX」というビジョンを示しました。AIエージェントがお客様固有のBCPや組織情報を理解し、発災時にはエマージェンシーコールやBCPortalの情報を自動で収集・統合。事業への影響度評価から意思決定支援、対応の提案までをAIが担うという仕組みです。あわせて、この構想を段階的に実装していくための、AIを活用した危機管理サービスの機能拡充計画についてもご紹介しました。


懇親会でのユーザー同士の交流と情報交換

本会終了後には、会場を移して懇親会を開催しました。立食形式の会場では、料理や飲み物を手にしながら、参加者同士が名刺を交換し、自社のBCP運用の悩みや、災害対応の実体験について語り合う姿が数多く見られました。

「同業他社がどのような運用をしているのか、なかなか知る機会がない」という声は、当社のお客様より多く寄せられています。講演を聞くだけでなく、他社の担当者と直接顔を合わせて話せる場も、参加者にとって貴重な機会となっていれば幸いです。

参加者の声

当日ご参加いただいた皆様には、アンケートにもご協力いただきました。自由記述では、次のようなお声をいただきました(一部抜粋)。

「日本大学の福田先生の講演や日亜化学工業様の具体的なお話が聞けたことは、とても有益でした」

「BCPについて情報交換ができる場が少ないため、このような会を主催していただけるのはありがたいです」

「他社との繋がりが薄く、情報交換ができていないので、危機管理ユーザー情報共有会に参加して意見交換を行いたいです」

「日亜化学工業様のBCP対策が非常に参考になりました」

「懇親会での交流を通じて、自社でも試してみたい取り組みが見つかりました」

一方で、「AIの活用について、具体的にどう変わるのかまで実感できていない」「AIが判断する上で、どの程度の事前情報や判断基準が必要なのか見えなかった」といった、AI活用の具体像を知りたいというご意見も多く寄せられました。こうした声は、今後のユーザー情報共有会や当社からの情報発信の中で、お応えしていきたいと考えています。

「ユーザー会2026」を終えて

今年も各地で災害が相次ぎ、自社の危機管理を見直そうと考えている企業の担当者様も多いのではないでしょうか。BCPの策定や見直しは、一人あるいは一部署だけで抱え込む必要はありません。

今回のユーザー会でご紹介したように、インフォコムは安否確認だけでなく、プロの危機管理コンサルタントによるBCP策定・訓練支援、他社の事例に触れられる「ユーザー情報共有会」、そして将来的にはAIを活用した支援まで、危機管理を幅広くサポートさせていただいています。

突然発生する予期せぬ危機に対して、「現状の危機管理体制で本当に対応できるのか」「改善したいが、何から手をつければいいのか分からない」そう感じている方は、ぜひ一度、インフォコムの危機管理コンサルタントにご相談ください。他社の事例や運用のヒントも交えながら、貴社の状況に合わせた危機管理対策を一緒に考えます。

危機管理コンサルタントに相談する(お問い合わせフォームへ)
 ※上記フォームの対象ソリューションで「コンサルティング・訓練」をお選びください。

なお、来年も「ユーザー会2027」の開催を予定しています。今回ご参加いただけなかった方も、ぜひ次回はお越しください。同じ課題を持つ他社の担当者、そして専門家とつながる機会として、多くの皆様のご参加をお待ちしております。

著者イメージ
この記事を書いた人
「安否確認Navi」編集部
阪神淡路大震災をきっかけに開発した緊急連絡/安否確認システム「エマージェンシーコール」の販売を通じ、お客様の危機管理に関する様々な課題をヒアリング。その豊富な知識とノウハウをコンサルティングやコラムに展開。

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