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中小企業における事業継続計画の必要性及びメリットを徹底解説

事業継続計画は、大企業が策定するもの…と思っている方も多いかもしれませんが、それは大きな誤解です。日本は災害が多い国、それに加えて近年の新型コロナウイルス感染拡大で、経営に大きなダメージを受けた中小企業は少なくありません。そのような危機的状況に陥った際、迅速に対処して損害を最小限に抑えるために、中小企業にこそ事業継続計画は必須、と言えます。そこでこの記事では、中小企業における事業継続計画の重要性や策定するメリット及び、策定方法を詳しく解説していきます。「事業継続計画は難しい」という先入観を持たずに、是非この記事を参考にして、計画の導入を検討してみてください。

事業継続計画とは?

事業継続計画とは?

事業継続計画は、大規模な災害が発生したときでも事業を継続できるよう、企業が策定する計画です。日本は自然災害も多いため、起こり得るリスクを想定した計画の策定が欠かせません。

地震や豪雨などの自然災害はもちろん、火災や操作ミスといった人為災害、感染症やテロなどの特殊災害に対しても事業継続計画を策定しておくことが重要です。また、ITの普及により、サイバー攻撃などのリスクも留意しておく必要があるでしょう。

この計画は有事の業務復旧や事業継続が中心のため、災害時の避難経路や行動指針を示した防災対策とは異なります。そのため、すでに防災対策を講じている企業であっても、事業継続計画が必要となる場合があるでしょう。

なぜ中小企業に事業継続計画が重要なのか

なぜ中小企業に事業継続計画が重要なのか

事業継続計画は、企業規模を問わず策定しておきたいものです。しかし、2017年度の内閣府の調査によると、大企業に比べて中小企業のほうが事業継続計画の策定率が低いことが分かりました。こうした背景から、中小企業庁より計画策定を促す制度が創設されるなど、国を挙げた取り組みもスタートしています。

このように、中小企業に事業継続計画が重要とされる理由には、次のようなことが挙げられるでしょう。

リスクに備えるため

大規模災害は、ある日突然起こります。業種によっては、翌日から通常の業務が行えないこともあるでしょう。このとき経営基盤が盤石な企業であれば、ある程度の休業でも持ちこたえることは可能です。

しかし、経営基盤が脆弱な中小企業だと、通常業務の停止が廃業や事業縮小、従業員の解雇などに結びつく可能性が高くなります。こうしたリスクに備えるためにも、事業継続計画は必要です。

有事の際に速やかに業務を復旧・事業継続するため

事業継続計画を導入している企業であれば、有事の際でも中核事業の維持や早期復旧が叶いやすくなります。一方、事業継続計画を導入していない企業では、復旧の遅れが発生し事業縮小を余儀なくされることもあるでしょう。中には、復旧が叶わず廃業に至るおそれも否めません。有事の際は操業率が大きく落ちるため、事前の計画が大切です。

事業継続計画を策定するメリット

事業継続計画を策定するメリット

2011年に発生した東日本大震災では、中小企業の多くが貴重な人材や設備を失い、廃業に追い込まれました。被災の影響が少ない企業でも、復旧の遅れにより製品やサービスを供給できず、顧客が離れて事業縮小せざるを得ない事例も発生しています。

このような緊急事態はいつ発生するか分からないものです。だからこそ、事前に事業継続計画を策定することには、次のようなメリットがあるでしょう。

緊急時に速やかに対応できる

突発的な緊急事態であっても、あらかじめ事業継続計画を策定しておけば速やかに対応できます。平常時からの備えが、有事の被害を軽減してくれることは、事業継続計画の大きなメリットと言えるでしょう。

もちろん、有事には事業継続計画どおりにいかないこともありますが、あらかじめ対処について検討を重ねておくことは緊急時の的確な判断へとつながります。計画をもとに、日頃から突発的な緊急事態を想定して、対応力を鍛えることが大切です。

信頼性の向上

事業継続計画の策定は、取引先など、対外的な組織からの信頼性向上にもつながります。緊急時の対策がしっかりと練られている企業であれば、取り引きを行っていく中での事業中断リスクが低いと考えられるためです。一方対策をとっていない企業だと、自社だけでなく相手企業の事業継続能力を弱める可能性も否めません。

そのため、大企業の中には、取引先に対して事業継続計画の取り組み状況を確認したり勧めたりすることも増えています。今後は、事業継続計画の策定が取引先を選ぶ基準として設定される可能性も高いでしょう。

業務の優先度が可視化できる

事業継続計画を策定する際には、災害が発生した場合にどの業務を優先的に復旧するかを話し合います。これらの過程で、日常業務の優先度が見える化できることは、平常時においても大きなメリットとなるでしょう。

また、事業継続計画の策定・運営により、融資や保険の優遇が受けられることもあります。2020年10月に中小企業庁が認定をスタートした事業継続力強化計画では、新型コロナなどの感染症対策による税制措置や金融支援などが示されました。このように、計画策定は有事の対応力を鍛えるだけでなく、平常時でも企業にとって有益な面が大きいでしょう。

企業の強み・弱みが把握できる

有事にどの事業復旧を優先するかの検討は、自社の強みと弱みの把握にもつながります。事前にそれぞれを正しく把握しておけば、災害発生時に第2、第3の事業継続対策を備えることが可能です。中核事業を行う上で必要な部品の工場が一極集中しているのならば、他の地域でも生産できる体制にしておくなど、復旧までの時間を短縮するような施策も講じられるでしょう。

中小企業における事業継続計画の策定方法

中小企業における事業継続計画の策定方法

多様な災害が発生している現在、事業継続計画の必要性はますます高まっています。実際に、2021年度の介護報酬改定からは、介護事業所は事業継続計画の策定が義務化されました。厚生労働省からは、事業継続計画の参考となるガイドラインやひな形も公布されています。介護保険など独自の制度も多い介護事業では、こうした資料も参考にしながら計画を策定していくと良いでしょう。

そのほかの事業では、中小企業庁が公表するガイドラインが参考になります。それらをもとに、ここからは事業継続計画を策定する方法について見ていきましょう。

目的・対象を決める

事業継続計画の策定では、まず基本方針を決めましょう。「何のために策定するのか」「策定や運用にどのような意味があるか」などを検討していきます。これらの基本方針は経営方針の延長にあるもので、計画の目的です。人命の安全や従業員の雇用、供給責任を果たすなど、それぞれの企業に合わせた目的を決めていきます。

目的が決まったら、次は対象を決めていきましょう。対象とは、自社で取り扱う商品やサービスのことです。緊急時は、限りある人員や資機材で事業を継続しなければならないため、あらかじめ優先的に製造・販売する商品やサービスを決めておきましょう。

現状の対策を洗い出す

目的と対象が決まったら、災害時に想定される被害についてあらかじめ洗い出していきましょう。例えば、震度5弱以上の地震が来た場合に、自社にどのような影響があるのかをイメージしていきます。

従業員の負傷や交通機関の停止による出社困難な状況、店舗の倒壊など多種多様な影響が予想されます。このように人、物、情報、金などにどのような影響があるのかを、さまざまな災害を想定しながら検討していきましょう。

リスクに応じて事業継続計画策定・社内教育

災害時のリスクが明確になったら、それらを軽減する事前対策を検討していきましょう。緊急時でも必要な経営資源を確保するためにはどうすれば良いのか、平常時から検討し、備えていきます。従業員の安否確認のルールを整備したり、重要なデータはデジタル化して適切に保管したりと、代替方法を考えておくことが重要です。

また、事業継続計画の策定を終えたら社内教育を行い、従業員の理解と定着を図ることが欠かせません。緊急時に適切な対応がとれるよう、平常時から訓練しておきましょう。新しい従業員が入社したときや事業に大きな変更があった場合は、見直しを行うことも大切です。

まとめ

地震や台風、感染症など、大規模災害は突然発生します。こうした有事の備えとして、事業継続計画の策定は大切です。この計画は決して特別なものではなく、日々の経営の中で考えている人材育成や事業継承などと同じ、事業継続への取り組みの一環です。また、事前に計画しておくことで、取引先からの信頼性の向上など平常時にもさまざまなメリットが得られるでしょう。この機会に、是非自社の事業継続計画について検討してみてはいかがでしょうか。

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