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不測の事態が起きたときに、少なくとも重要な業務だけでも、できる限り早く復旧させるのは、企業の重要事項です。そこで必要となるのが、事業復旧のためのBCP(事業継続計画)です。
この記事では、BCPの必要性について詳しく解説するとともに、BCP作成のポイントや手順、活用方法について紹介します。災害時に素早く適切な行動をとれるよう、この記事を参考にBCPを活用しましょう。
BCPとは?なぜ必要なのか
BCPとは「事業継続計画(Business Continuity Plan)」のことで、災害などの緊急事態が起きた際に事業を継続させるための計画や対策を指します。
BCPはどのような緊急事態が起ころうが、重要業務だけは停めない為に備えておくことが目的のため、「地震や豪雨、津波などの自然災害のほか、火災や操作ミスなどの人為災害や、テロや感染症など特殊災害」と言った原因事象ではなく、その結果自社に被害を起こす結果の状況に対策をしておくことが必要です。
2011年の東日本大震災(自然災害)や、新型コロナウイルス(特殊災害)による企業や経済への影響は、記憶に新しいのではないでしょうか。このような緊急事態が発生した際、重要な事業だけでも早く回復させるためには、あらかじめ重要な事業を絞り込んでおくことが重要です。
企業にはBCPを作成する義務はありませんが、BCPがなかったために重要な事業が継続できなかったり、それにより取引先とのトラブルになったりなど、企業の存亡の問題が発生する可能性があります。BCPは策定しておく事により、何が起ころうが、企業として商売が継続出来るようにする必要があります。
BCP策定の手順を知ろう
BCPを作成するためには、必要な手順を踏んでいくことが大切です。ここでは、必要な手順を経済産業省が発表している策定ガイドラインに沿ってチェックしていきましょう。
考えられるリスクを洗い出す
まず、自社にとって「これをやられると会社が成り立たないよね」と考えられる状況を洗い出しましょう。リスクの種類を出すのではなく、その結果、自社にどういった影響がでるのかを洗い出すために各部署から担当者を選出しておくとスムーズな対策が考えられます。
自然災害や事故などによるリスクだけではなく、業績の悪化などによる経営リスクのほか、社員の不祥事などによる労務リスクなどが起こった場合の状況も忘れずに洗い出すことが重要です。
優先順位をつける
リスクの洗い出しが完了したらそれぞれに優先度をつけます。優先順位をつける際は、そのリスクが起こりうる可能性や頻度、リスクの重要度に応じて策定していきます。
例えば、IT企業であればネットサービスの停止やセキュリティに関する事項は死活問題となるため、インフラに対する重要度が高いマニュアルが必要になるでしょう。ほかにも福祉施設であれば、自然災害により電気や水道などが止まった場合や、要介護者の移動手段の確保が重要になります。
このように、従事する業種によっても優先度や頻度、優先する業務は異なるため、自社の事業に当てはまる策定事例をもとに策定しましょう。
フェーズごとに具体的内容を決定する
起こりうるリスクや優先順位をつけたら、フェーズごとに区別し、具体的な内容を決めていきましょう。
このフェーズは大きく3つに分けられます。リスク発生時の「発動フェーズ」、業務を代替し再開させる「再開フェーズ」、業務を平常時に戻すために復旧していく「回復・復旧フェーズ」です。
発動フェーズでは、現状把握し被害を最小に抑えることが目的です。ここでは、災害発生時から24時間~1カ月未満までの段階での自社への被害状況を把握します。二次災害の防止や業務継続、周囲の安否確認などが行動の一例です。
再開フェーズでは、重要な事業を早急に整えられるよう、代替や移行をして再開の段取りを行います。店舗や工場の手配、人員の確保や代替、移行が主な行動です。
回復・復旧フェーズは、災害による被害をもとの状態へと復旧し、平常運転できる状態に回復させるフェーズです。発動フェーズ終了後、事業を本格的に動かしていくことが目的です。設備や施設を復旧させる物理的なもののほか、ネットワーク管理など技術的な復旧が、このフェーズに該当します。
それぞれのフェーズを行い、解決していくことで、業務を順調に進められるでしょう。
今回紹介した項目は、様式集として中小企業庁や各商工会がテンプレートを配布しているため、まずはテンプレートに自社を当てはめて検討していくことも有効です。
特に、介護施設や介護関連の事業所の業務継続計画の作成を検討している方は、厚生労働省に作成支援のページを参考にするのがおすすめです。このページでは、「自然災害発生時における業務継続計画(ひな形)」というものがあるので、これを使えば自社の内容を当てはめるだけでBCPが作れるでしょう。
BCP策定のコツ
リスクを洗い出し、優先順位をつけただけでは、災害時に動ける体制は作れません。BCP策定には、いくつかのポイントを押さえる必要があります。では一体、どのようなポイントを押さえておけば良いのでしょうか。
応援要員・代替拠点の確保
災害の内容によっては、人的被害やインフラ機能が停止することも考えられます。災害時には、応援できる人員や代替拠点の確保が必要です。その場合、他部署や拠点と協力することで、スムーズな業務再開が実現できるでしょう。また、データや連絡手段はクラウドサービスを活用するなど、主な業務基盤を他の拠点からでもアクセス可能な状態にしておくことで、業務の継続がしやすくなります。いくつかのパターンを戦略としてまとめておく事をお勧めします。
災害対策本部メンバーを決めておく
災害時は、さまざまな部署から多くの情報が行き交います。その際、人により指示の内容が異なることも少なくありません。各部署の責任者を決めておくほか、責任者が不在のときの代行者も決めておくと安心です。決定した責任者は全体に共有しておきましょう。
また、事業継続のためには対策本部を組織することが必要です。対策本部により、企業全体での動きが把握しやすくなります。従業員や拠点が多い企業は、メンバーを横断的に配置しておくと、スムーズに対策を進められるでしょう。
情報の見直し・アップデート
マニュアルで作られた情報は社内で共有し、代替拠点や責任者の所在を明かしておきましょう。そのうえで、責任者が異動になった場合や改善点が見つかった場合は、常に修正とアップデートが必要です。また、事業の拡大、縮小の際は必ず見直しましょう。
BCPを正しく機能させるには
BCPを策定したものの、いざ災害が起きた場合に正しく機能しないのであれば、BCPが存在していないのと変わりません。正しく機能させるためには、策定後の行動が重要です。
対象は中核事業に絞っておく
重要性が高い部分の回復を優先的に狙うために、対象を中核事業に絞っておきましょう。災害レベルによっては、すべての事業の復旧を目標とすると作業が混沌とすることがあります。企業の存続に関わる重要な部分を抜き出しておくことで、早い回復が叶うでしょう。
具体的行動を明らかにする
企業全体の動きや復旧のマニュアル化だけでなく、従業員の行動もマニュアル化しておく必要があります。その際、各部署や拠点、立場に応じた行動や災害時に確認するチェックポイントも用意しておきましょう。
このとき、抽象的ではなく具体的な指示を決めておくことで混乱を防げます。
計画に沿った訓練の実施
作成したBCPをもとに、全従業員を対象とした教育や訓練も必要です。各々の動きを確認することで、万が一のときにスムーズに行動することができます。防災訓練では、自治体や消防と連携した訓練も必要になるでしょう。人の異動や業務内容の変化もあるため、定期的な訓練が必要です。また、訓練中に見つかった課題は、適宜チェックと修正を行います。
目標を顧客と協議
特に大きな災害が起きた場合、即座にもとの業務へ戻せることは限りなく困難です。そこで、あらかじめ顧客と復旧の目標を協議しておく必要があります。しかし、実現不可能な計画だと顧客の不信感を生むだけでなく、顧客が求めるレベルの復旧に応えられない場合もあるでしょう。企業が思う復旧と顧客が想定する復旧で差があると、信頼関係が崩れる心配もあるため、事前のすり合わせが重要です。
まとめ
BCPは、事業を行ううえで必須ではないものの、企業の存続を考えると必要不可欠なものと言えるでしょう。また、定期的な見直しや修正、訓練が必要になるため、継続して行える体制作りも重要です。
策定の際は、「BCP策定の手引き」などが中小企業庁で開示されているため、参考にしてみましょう。策定のポイントや手順を把握して、自社の事業に沿ったBCPを策定し、もしものときの人員が足りないと判断した場合はコンサルタントなどプロの手を借りることも検討してみてください。