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BCP訓練を実施する目的とは?種類や特長などについても解説

BCPを策定したとしても時間が取れないとか、やり方がわからないなどで訓練を実施できていない企業もあります。その場合、実際に災害が発生した時にすばやい対応ができません。そのため、訓練を日ごろから行っておくことが大切です。また、BCPの実効性も評価しておく必要があります。

しかし、どのような訓練が自社に適しているのか把握できていないケースもあるでしょう。今回は、BCP訓練を行う目的、訓練の種類や特徴、行う際の手順、実施する際のポイントをみていきます。

BCP訓練を実施する目的とは

避難訓練②

まず、BCP訓練を実施する目的についてみていきましょう。訓練の目的を知ることで、定めた対策の有効性・災害への意識を定着させることが可能です。

BCPの実効性を確かめられる

BCPを策定したとしても、実際に訓練をしなければ有効性を確認できません。そのため、定期的な訓練を行いつつ、見直しを行いましょう。訓練を実施することで、計画通りに行動できるか、計画をした戦略が有効なのか確認できます。

災害への意識を定着させられる

BCPを策定し、訓練を行うことで、従業員に有事の際の必要な知識などを身につけさせることができます。また、訓練を継続することで、災害への意識を定着させることもできます。

BCP訓練の種類と特徴

会議風景

BCP訓練の種類やそれぞれの進め方についてみていきましょう。1つの種類だけでなく、複数の種類を実行することで、有効性の有無、手順の確認、データの復旧などさまざまな課題を総合的に判断し対策を行うことが可能となります。

机上訓練

机上訓練は、実際の環境で策定したBCPや緊急時行動手順書の内容に沿って動けるか、議論形式で検討する訓練となります。BCPの実施に関わる従業員や経営層で内容の擦り合わせを行い、計画自体に問題はないのか確認しましょう。

緊急時連絡体制

災害の発生時に従業員同士や対策本部と連絡を取れるか確認する訓練です。電話やメール、SNS、専用アプリなどさまざまな連絡手段を利用して行います。かつては、災害時は電話やメールは全く使えなくなると言う事が当たり前のように思われていましたが、時代とともに技術も進化し、マルチメディアを使う事によって、連絡が取りやすくなっています。

代替施設への移動やバックアップデータの復旧訓練

施設の機能に影響が出るような大きな災害が発生した場合、既存のオフィスなどが使用できなくなる可能性があります。

代替施設への移動訓練は、災害の発生に備え、事前にオフィスや工場などの代替施設を用意している場合に行う訓練です。代替施設に速やかに機能を移転できるかを検証します。

しかし、新型コロナ禍において、テレワークが当たり前のようになってきました。そもそも、集まらなくてもできる「集まらない災害対策本部」の訓練が増えています。災害時に被災している場所に、会社の重要社員を集めても、2次災害になる可能性もあり、インフラが整わない中で、かえって効率が悪くなります。災害対策本部は、安全で衣食住が整った場所、もしくは、被災地外からのリモートで出来る方法を模索しましょう。インフォコムでは、新型コロナ禍になる以前から、「集まらない災害対策本部」を推奨しており、何十社ものリモート訓練を行ってきました。リアルで集まる場合とリモートの違いをしっかりと認識した上で、実際に訓練をしてみましょう。

バックアップデータの復旧訓練は、災害によるデータの消失などを想定し、バックアップデータの入手やシステムの再起動を行います。災害がいつ発生するか把握できないため、復旧に支障が出ないように更新頻度の検証も同時に行うことが大切です。ハードウェアが壊れた場合、新しい機械に取り換える事で、OSのバージョンが合わず、普段使っているソフトウェアが使えないという事もありますので、実際にやってみると頭で考えるより、うまく行かないケースがあります。

総合訓練

総合訓練は、BCPを発動する災害などが発生してから復旧対策までの流れを検討する訓練です。特定の災害や被害を想定したシナリオを作成して、机上訓練で流れを検証し、安否確認などを実際に行う訓練と組み合わせて、複合的に行うケースもあります。

社内だけで実施するほかにも、近隣の企業や自治体と連携して行うことで、災害時の連携を円滑にできるうえに対策を行っているというアピールも可能です。

ただし、総合訓練は準備も費用もかかりますので、まずは、災害対策本部立ち上げ訓練や、被災地との連携訓練をやって、少しずつ積み上げて行ってから、総合的にやる必要があります。

BCP訓練を行う際の手順

オフィスでの仕事風景

BCP訓練を行う際の手順についてみていきましょう。手順を把握しておくことで、スムーズな流れや訓練の価値を高めることが可能です。

訓練の計画と準備

訓練のテーマや想定する災害、被害状況などのシナリオを決めましょう。緊急事態に近い状況で訓練を行うためには、人員やシステムなどある程度の準備も必要になります。シナリオ作りは、あえて、少し難しい内容にして、うまく行かない事で気づきを得るという方法を取る場合もあります。このあたりは、経験値が必要となりますので、プロに依頼する事で時間の短縮をはかる方法も検討してください。

また、実際に被害が発生したことを想定するため、災害時の役割分担を明確にしておくことも重要です。平常時は人に役割を与えていますが、災害時はやらなければならない事をリストアップしておき、その場にいる人でやるという事が大事です。
バックアップデータの復旧を行うデータ班、従業員の安否確認を行う連絡班など以外に、全体の戦略を決める作戦班も決めておき、災害時の行動を確認しておきましょう。対策本部は、ICS(インシデントコマンドシステム)と呼ばれる、5つの機能を持ったチームを採用する事をお勧めしています。

例えば、「震度6強の地震が発生し、オフィスが停電」など被害状況を詳細に設定することで、各班の判断力を養い、訓練の価値を高められます。

BCPは企業規模に関係なく企業内の話し合いが必須であるため、一人の担当者に任せるのではなく、経営層と話し合いながら内容を定めていきましょう。

実施

訓練を行う目的や検証テーマを参加者に伝えたうえで、シナリオに沿って訓練を開始します。訓練を行っている参加者の対応や質問を記録することで、訓練後の分析に役立つでしょう。また、評価者と評価シートを用意しておき、毎年、どの程度向上したかを確認する事と、BCPや緊急時行動手順書を修正するための資料にすることが大事です。

また、BCP通りに行っても、実際には想定通りにいかなかった事項を記録しておくことも大切です。

評価

訓練終了後は、訓練を振り返り議論を行う必要があります。訓練についての問題点や実際に災害が発生した場合に向けて、強化すべき点を取り上げることも重要です。改善点を洗い出すことで、さらに効果的なBCPにするためにブラッシュアップができます。

BCP訓練を実施する際のポイント

手を組む男性

BCP訓練を実施する際のポイントをみていきましょう。いきなり実施するのではなく、内容を策定した場合にはあらかじめ経営層や従業員に周知し、訓練の実施に意味があることを伝えておく必要があります。客観的な評価が難しい場合は、経験豊富な外部の専門家も交えて改善していくなどの工夫も大切です。お気軽にご相談下さい。

訓練の意味や目的を周知する

BCP訓練は従業員に内容を浸透させることが目的です。BCPの検証、非常時に使用するツールやシステムの確認などの情報を周知していきましょう。

あくまでも訓練なので、緊張感がない、訓練の必要性を感じないという声が上がるケースも考えられます。そのため、事前説明で目的や検証テーマといった意図を伝えたうえで、どのような内容の訓練を行うのか明確にすることが大切です。

訓練後の評価は必要

訓練を行う場合、実施後の評価も必要です。上手くいった点や問題点の振り返りを通して、課題を見つけ見直すことが大切です。

振り返りにおいては、班などのチームごと、参加者全体、経営層などそれぞれ異なる立場から気づいた点を挙げていきます。

評価する際には、参加した従業員が適切な行動を取れていたかどうかの確認が必要です。対応にかかった時間、状況を正確に整理できたか、適切な行動を取れたかといった点に分けて評価しましょう。専門的で客観的な視点から意見を得たい場合は、外部から専門家を招くことも有効な手段です。

また、訓練の運営に関しても評価することが重要です。内容や被害想定、シナリオ、準備内容などの問題点や課題点を見つけておけば、次回以降に活かせます。

訓練後に適切な評価を行うことで、計画をより良いものにブラッシュアップすることが可能です。

まとめ

BCPを策定しただけでは、実効性を確認できません。訓練の実施を通して、計画の通りに行動できるか、対策が有効であるかの確認が可能です。

また、従業員がBCPについて把握していなければ、災害時に混乱してしまい、適切な行動を取ることができません。しかし、訓練を行うことで従業員に必要な知識や行動が身につき、継続することで災害への意識を定着させられます。

訓練の種類には、机上訓練、代替施設への移動訓練などさまざまな種類があります。内容が大きく異なるため、自社に必要なものを選択して実施することが重要です。

BCP訓練を行う場合、計画を立てるとともに、シナリオの作成、人員やシステムなどの準備も必要になります。経営層や従業員の関心を高めるためにも、事前に行う目的や検証テーマを参加者に伝えたうえで、開始することが大切です。

訓練が終わった後は必ず評価を行い、BCPをブラッシュアップさせましょう。

前職にてロケット搭載用精密バルブやセラミック製バルブ、プラント用継手の設計を担当。高圧ガス製造保安責任者、危険物取扱者、非破壊検査、溶接管理技術など、多数の現場経験と資格を保有。 BCPについては、事業継続推進機構の災害情報研究会で、実際の危機発生時に情報がどのように流れて行くかを調べ、ICT技術を使って、リスクをいかに軽減できるかを研究している。リスク対策コンサルタントとして、多数のBCP策定支援や訓練支援を行っている。

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