インフルエンザや麻しん・風しんなど、企業内で感染症が流行した場合、事業を中断せざるを得ない状況に陥ったり、従業員の健康が脅かされたりなど、さまざまなリスクがあります。これらのリスクから企業を守るには、事前の予防対策の実施や、感染者発覚後の対応を事前に決めておくことが重要です。
ここでは、企業における感染症対策(予防・対応)の必要性に触れながら、具体的な対策や他企業の事例などを紹介します。
なぜ企業で感染症対策が必要なのか?
企業の感染症対策の重要性について、その理由を2つに分けて詳しく解説します。
従業員の健康を守るため
労働契約法第5条の安全配慮義務により、企業には従業員の健康と安全の確保、および安心して働ける職場環境を形成することが求められます。従業員の健康と安全を脅かす感染症に対しても、もちろん対策が必要です。
これらの対策を怠った結果、職場で感染症のクラスターが発生した場合、安全配慮義務違反を指摘される可能性が高まります。また、感染症の発症に関し、業務や通勤との関係性が認められた場合は労災保険の対象となります。
クラスター発生により事業中断の危険があるため
職場内で感染症によるクラスターが発生した場合、人員の不足や現場の混乱などにより業務の進行に支障が出て、最悪の場合には事業中断のリスクも考えられます。いかなる事態でも自社の事業を継続させるためには、事前の感染症対策が非常に重要です。
また、新型コロナウイルス感染症が全世界でまん延した際は、物流の遅延や寸断などが発生し、サプライチェーンにも大きな影響を与えました。これらの事態を避けるためには、感染症対策だけでなく、事業継続に重きを置いたBCPの策定が有効です。
企業の感染症対策や取り組み7つ

企業が実施すべき感染症予防対策や、社内感染が発生した際の対応について、大切なことを7つご紹介します。
①手洗いや消毒などの基本的な感染防止対策
職場における感染症の感染経路は、大きく空気感染・飛沫感染・接触感染に分けられます。これらを防ぐための取り組みとして、手洗いやうがいを呼びかけるほか、マスクの着用を促したり、入口に消毒を設置したりなど、基本的な感染症対策が必要です。階段の手すりやドアノブ、会議室など、多くの人が触れる場所は定期的に消毒するなどの社内ルールも整備しましょう。
ほかにも、自動体温測定器を設置したり、足で開閉できるドアノブによって接触を最低限に抑えたりなど、機器や設備を導入して対策を強化している企業もあります。
②定期的な換気や仕切りなど職場の安全対策
空気感染や飛沫感染のリスクを下げるには、定期的な換気が必要です。オフィスなどが入った建物には建築基準法に基づいて換気設備がすでに設置されていますが、大人数が集まる会議室などは感染リスクが高まりやすい場所のため、積極的に換気を行いましょう。換気の頻度や手順などのルールを整備しておくと従業員がより実行しやすくなります。
職場内でのウイルスのまん延を防ぐには、密接や密集を避ける対策も重要です。たとえば、デスクの間にパーテーションを設ける、社員食堂では必ずひと席開けて座るなどの対策を実施しましょう。密をなるべく避けるよう、執務室や会議室、社員食堂の利用時間を分散させるといった方法も効果的です。
③予防接種の費用補助や受けやすい体制の整備
感染症の発症や重症化を防ぐには、事前の予防接種が重要です。多くの方が予防接種を受ければ、職場でのクラスター発生を予防することにつながります。予防接種費用の負担を福利厚生として取り入れる以外にも、保険組合の補助金を案内するなど、接種を促す方法はさまざまあります。ただし、あくまで任意接種のため、従業員に接種を強制できない点は理解しておきましょう。
費用負担だけでなく、体制の整備も欠かせません。就業時間内に予防接種を受けに行くことを認めたり、有給を付与したりなどの配慮が接種率アップを後押しします。
④テレワークやフレックスタイムなどの導入
職場での密を避けるには、一度に出社する人数を抑える取り組みが効果的です。テレワーク(自宅勤務)やフレックスタイムなど、柔軟な働き方ができる制度を導入することを検討しましょう。たとえば、時差勤務制度の導入により、更衣室などでの密を避けることができると考えられます。
ただし、これらの制度を導入する場合は、生産性が低下しないよう事前のルールづくりが鍵になります。たとえばコミュニケーション不足を補うために定期的に会議を実施する、業務の進捗管理方法を見直すなどの事前準備が必要です。そのほか勤怠管理方法の検討や、テレワーク時のセキュリティルールの策定などが重要となります。
⑤感染症対策の研修・セミナー実施
感染症対策は、企業側の制度づくりや体制整備だけでなく、従業員ひとりひとりの意識向上が重要です。感染症をテーマにした研修やセミナーなどを実施し、従業員に理解を深めてもらいましょう。社内で実施する場合は、専門家や講師を招いての実施が基本です。外部のセミナーや講習会に参加する方法も検討してみてください。
感染症の予防方法や発症後の対策を知ってもらうことで、従業員は適切な対応をとれるようになり、感染の拡大防止につながります。また、職場における感染症対策への意識向上は、体調不良時に誰もが休みやすい組織風土の醸成にもつながります。
⑥体調不良者が気兼ねなく休める制度・環境づくり
発症後も出社を続ける従業員がいれば、感染症のまん延を招き、クラスター発生の可能性が高まります。そのような事態を避けるためにも、体調不良時に誰もが気兼ねなく休みやすい制度や環境の整備が必要です。
たとえば体調が優れない従業員や、感染者と濃厚接触した従業員の行動フローを明確にし、職場内に周知させるといった方法があります。その際、年次有給休暇を利用するのか、欠勤扱いとなるのか、または特別休暇を設けるかなど、休む際のルールの整備がまず必要です。「体温が37度以上の場合は休暇推奨」など、明確な基準を設けることも考えましょう。
また、従業員本人の体調不良時だけでなく、家族が感染症を患った際の休暇制度を整えておくと、より感染の拡大防止につながります。
⑦従業員が感染症にかかった際の対応
感染予防の観点だけでなく、感染症が発生したあとの対応の明確化も重要です。たとえば拡大させないためには、体調不良者に即座に医療機関を受診してもらい、出社停止を判断する、感染者が接触した場所の消毒と清掃を行うなどの方法が考えられます。
また、感染が発覚した場合は、チーム内への迅速な報告と共有が必要です。感染者発覚後の初動対応手順の一例を以下でご紹介します。
- 感染症にかかった従業員は上長へ発熱の有無や現在の体温、出社可否などの現状を報告
- 上長は感染者が発生した旨を対策本部メンバーへ共有
- 対策本部メンバーは情報を取りまとめ、全社に通知
上記のように対応をあらかじめ定め、周知することで、被害を最小限に抑えることにつながります。
企業の感染症対策の事例

他社の感染症対策の事例を2つご紹介します。
事例①体調不良者が休みやすい体制を整備
愛知県のある運送会社では、出勤前の健康チェックや体調不良時の休業制度の導入など、7つの対策を実施しています。具体的には、発熱の有無や症状などの健康状態を報告できるアプリを導入し、健康チェックを行っています。そして体調不良者や発熱者は3日間のテレワーク、もしくは休業する制度を確立しました。
これらの対策は従業員の声をもとに考案しており、状況にあわせて随時見直しも行っているそうです。
事例②事業継続を意識した感染症対策を実施
愛知県の医療機器メーカーは、「自社で感染者を発生させない」「病原体を外から持ち込まない」を基本原則に、健康チェック体制や予防接種休暇の導入、大型サーモグラフィの設置など、ソフト面・ハード面の両方で対策を進めてきました。
事業継続を意識し、強化したのは感染症マニュアルです。管理者向けのマニュアルを作成し、出社可否の判断基準や消毒方法などを明確にすることで、感染を拡大させない取り組みを続けています。
リスクに備え、BCPの策定も視野に
感染症の流行に限らず、あらゆる脅威が発生した際に被害を最小限に抑え、迅速な事業継続へつなげていくには、BCPの策定が有効です。BCPは自然災害や感染症、サイバー攻撃など、さまざまなリスクを想定したオールハザードの計画です。以下でBCPの策定手順やポイントの解説のほか、テンプレートの配布を行っているので、ご興味のある方はぜひ注目してみてください。
企業の感染症対策にはシステムやITツールの活用も
感染症への対策を強化するには、システムやITツールの活用も効果的です。
BCPortal|感染症発覚時のコミュニケーションをサポート
災害時の情報収集・管理システム「BCPortal」は、感染発覚時のコミュニケーションツールとして活用でき、初動対応や事業継続に必要な情報収集をサポートします。グループトークの機能を活用し、従業員や管理者、対策本部メンバーなどで、スムーズなやり取りが可能です。
エマージェンシーコール|現状報告から全社向けの通知まで
安否確認システム「エマージェンシーコール」も感染症対策に有効です。「エマージェンシーコール」では、感染症に罹患した従業員がシステム上で現状を共有・報告したり、対策本部メンバーが感染者発生の旨を全社へ一斉送信したりなど、迅速な情報収集と発信をサポートします。オフィスの入室可否や注意事項、社内の消毒実施日など、日々の対応報告にも活用できます。







